JICA大学連携による海外協力隊派遣活動報告(ウガンダ)4月 島田卓さん(最終報告)
掲載日:2023.05.24
獣医学部獣医学科( 2012年度卒) 島田 卓(Taku Shimada)
2021年12月から始まった私のウガンダでの協力隊活動は、様々な事情により1年3ヶ月を迎えたところで終えることになった。当初は2年間の予定での派遣ではあったものの、この1年3ヶ月は2年に相当する、いや、それ以上の濃密な期間を過ごすことができたように感じている。
思い起こせば20年前、私が高校のころに見たテレビ番組で、開発途上国での活動をする獣医師の道があることを知り興味を抱いたことがきっかけだった。それから数年後、高校の同窓会で久しぶりに会った同級生から「たしか島田君は開発途上国で獣医師として現地の人のために働きたいと言っていたよね!」と声をかけられた。そんなことを言っていたなんて正直覚えていなかったが、大学を卒業してすでに生産動物獣医師として働いていた自分にとって、その同級生が教えてくれたその一言は、すでに心の中で忘れかけていた気持ちに再び灯がともった瞬間だった気がする。
そこからさらに紆余曲折はあったが、最終的に大学連携でウガンダに派遣されることになり、昔から抱いていた自分の気持ちに応える機会を得ることができた。実際はCOVID19の影響で約2年間派遣が延期になってしまったが、この派遣延期の期間も、私にとって生産動物だけでなく伴侶動物に対する知識や技術を身に付ける絶好の機会となり、実際にその知識や技術はウガンダでの協力隊活動でも活かすことができた。そういう意味では派遣延期の期間も含めて、協力隊での経験すべてが私の財産となっている。
私が活動してきた内容についてこれまでも報告させてもらってきたが、新しい報告も加えて改めて振り返りたい。
まず、要請内容の根幹であった草の根プロジェクトのフォローアップ活動は、移動手段が制限される中で、最低限ではあるがプロジェクトに参加していた30農家に対する聞き取り調査を実施し、問題点の抽出と改善方法を農家に提示することができた。さらに一部の農家に関しては搾乳立会を実施し、搾乳手技や衛生環境を実際に観察し、必要に応じて指導することができた。今思えば、派遣延期期間中に行われた配属先人事の一新により、当時のプロジェクトに関わっていた獣医師や普及員は周囲にいなく、なかなか配属先職員からの協力が得られない中での活動だった。しかし、その中で自分が農家のためにできることを模索して活動したことで、今できる最善の方法を導き出して行動する力を養うことができたと思う。
次にプロジェクト関連以外の活動に関して報告する。普段の業務は配属先の県獣医事務所に付属している研究所でおこなっていた。獣医師や農家が持ち込んだ検体の検査を実施し、検査結果を元に今後の治療方法や飼養管理のアドバイスをおこなった。また、検査方法や手技についても見直しをおこない、最適な検査方法を同僚の獣医師や検査技師と話し合い、新たなSOPを作成した。研究所内の5S活動にも取り組み、同僚が継続して実施できるように周知した。
他にも、同僚と一緒に往診で予防接種や治療をおこない、時には同僚にアドバイスをおこなったりしてきたが、獣医師としてウガンダの獣医療にわずかばかりでも貢献できていれば幸いである。
協力隊活動は配属先だけではなく、ほかの協力隊員と一緒に行う様々な活動(ストリートチルドレン保護施設でのボランティア活動や、灌漑プロジェクト周知のための文化交流イベントの企画・実施等)も行った。開発途上国の抱える様々な問題をより深く考える機会となり、この経験は、帰国後も継続して国際協力に携わっていきたいと考えるきっかけとなった。
アパートの大家さんにウガンダ料理を教わりながら一緒に作ったり、守衛さんにニャンコレ語を教わったり、地元のマーケットで買い物したり、同僚と毎日のティータイムでたわいもない話をしながら過ごしたり、サファリに行ったり、ときには病気で入院したりと…ウガンダでの活動は決して楽しいことばかりではなかったが、それでもここまでやってこれたのはウガンダの豊かな自然とたくさんの人の支えがあったからだと感じている。
最後に…
今後どのような形で携わっていくかはまだ未定だが、この経験を胸に、開発途上国への継続した支援を通して社会貢献をしていけるようにこれからの仕事に従事していきたいと思う。(終)
関連リンク
・島田さん活動報告
2023年1月の記事はこちら
2022年10月の記事はこちら
2022年7月の記事はこちら
2022年5月の記事はこちら
2022年2月の記事はこちら
・酪農学園大学 WOAH 食の安全コラボレーティングセンター※
国際協力・研究活動のページ
※国際交流課注:
本学獣医学群は、WOAH食の安全コラボレーティングセンターコンソーシアムとしてWOAH加盟国の動物生産における食の安全(Animal Production Food Safety)の向上に貢献しています。酪農はウガンダ国民への栄養供給に重要でありかつ、主要な輸出産業です。本大学連携の取り組みは、2016年から2019年にかけて実施されたJICA草の根技術協力事業「ムバララ県安全な牛乳生産支援プロジェクト」の後継事業として実施されています。