JICA大学連携による海外協力隊派遣活動報告(ウガンダ)10月 島田卓さん
掲載日:2022.10.25
獣医学部獣医学科( 2012年度卒) 島田 卓(Taku Shimada)
任地ムバララでの生活は8 ヶ月が経過した。7~8 月は乾季で全然雨が降らず、赤土の道路を車が通れば、たちまち前が見えなくなるほどの砂埃が舞いあがっていた。靴も服も、いつも洗濯すると水が赤茶色になるので、何度もすすぐ 必要がありとても苦労した。
乾季の影響は農家には深刻な問題で、放牧地の草は水不足で茶色く、家畜が十分に食べるだけの草がない。かといって雨季の間に十分に飼料をストックするような習慣がないので、飼料不足で当然乳量は下がる。乳価が安いので収入も下がってしまうが、労力を惜しむためか、それも仕方ないと考えているようである。
9月に入ると打って変わって、雨期に入り天候の変化が激しい。降ったりやんだりの繰り返しで、毎日傘が手放せない(傘を使っているのは私だけのようだが)。おまけにムバララは朝晩とても冷え込むので、使うことはないとスーツケースにしまい込んでいた長袖を引っ張り出して着ている。人にとっては厄介な雨であるが、この雨のおかげで放牧地は普段の緑色を取り戻し、心なしか家畜も待っていましたとばかりに嬉しそうに採食している光景を目にするようになった。
これまで2016~2019に実施されていた草の根プロジェクトの参加農家の聞き取り調査を実施してきたが、ある程度の傾向が見えてきた。どの農家もプロジェクトを通してある程度の知識や技術を持っていて、その中で自分たちが取捨選択して独自の方法を構築しているようである。実際、プロジェクト前と後を比較すると格段に成績は向上しており、プロジェクトが終わって3年が経過した今でも一定のレベルを維持しているように思われるので、プロジェクトは一定の成果があったといえるだろう。たとえ独自の方法を行っていたとしても、コストなどを考慮した結果であり、それが完全に間違ったやり方でない限りはその方法を尊重して、それを踏まえて引き続き安全な牛乳を生産していけるようなアドバイスをしていきたいと思う。私が気になる点としては、当時と比較して代替わりしていたり従業員が一新されていたりする農家に関してである。オーナーはプロジェクトを通して知識を有しているので、聞き取り調査ではできていると言っていても、実際の従業員を見てみるとできていないこともあるようである。そういった新しい従業員に向けて、視覚資料を作ることを計画中である。
プロジェクト以外では、同僚の獣医師に同行して手術を手伝ったり、予防注射に同行したりして、ウガンダの獣医療事情を知ることができ、非常に参考になった。
日常生活での最近の私の楽しみは、アパートの大家さんや同僚にウガンダ料理を教えてもらうことである。前回紹介したようなチャパティも実際に自分で作れるようになり、また、ムバララ周辺でよく食べられているアカロやエシャブウェ(ギーと岩塩水を混ぜて作ったソース)も、材料さえそろえば自分で作れるようになった。代わりに親子丼や炊き込みご飯など、日本の味をふるまったりして異文化交流している。
休みの日に街のマーケットに行くのもいろいろな発見があっておもしろい。そこでアカロを入れる籠(アキーボ)を集めたり、仕立て屋さんでチテンジを使ってシャツを仕立ててもらったりと、ムバララの文化に触れながら生活を楽しんでいる。その他、同僚主催のパーティーに招かれたり、農業祭に参加したりと、ウガンダの様々な文化に触れることができた。
職場の人事や環境が変化したりして、なかなか思い描いていたような活動ができない日々が続いているが、限られた活動の中で何かひとつでも農家のためになるようなものを作り上げられるように、引き続き活動を進めていきたいと思う。
関連リンク
・島田さん活動報告
7月の記事はこちら
5月の記事はこちら
2月の記事はこちら
・酪農学園大学 WOAH 食の安全コラボレーティングセンター※
国際協力・研究活動のページ
※国際交流課注:
本学獣医学群は、WOAH食の安全コラボレーティングセンターコンソーシアムとしてWOAH加盟国の動物生産における食の安全(Animal Production Food Safety)の向上に貢献しています。酪農はウガンダ国民への栄養供給に重要でありかつ、主要な輸出産業です。本大学連携の取り組みは、2016年から2019年にかけて実施されたJICA草の根技術協力事業「ムバララ県安全な牛乳生産支援プロジェクト」の後継事業として実施されています。