JICA大学連携による海外協力隊派遣活動報告(ウガンダ)1月 島田卓さん
掲載日:2023.03.06
獣医学部獣医学科( 2012年度卒) 島田 卓(Taku Shimada)
私がウガンダに来てから1年が過ぎ、任地ムバララでの生活も11ヶ月が経過した。9月から始まった雨季も12月が過ぎればまた乾季が始まっている。しかしながら8月のようにまったく雨の降らないようなことはなく、適度に降ってくれるので比較的過ごしやすい。
雨季といえば、9月から12月までマーケットには日本人にあまり馴染みのない変わった食材が出回っていた。ウガンダでセネネと呼ばれるそれは、食用のバッタである。最初は食べるのに少し抵抗があったが、食べてみるとまさに海老の唐揚げを食べているようで美味しい。海のないウガンダで少し海の味を感じれた気がした。さすがに生きたセネネを買って調理する勇気はまだなかったのでいつも調理済みのものを買っていたが、もっと慣れたら生のセネネから自分好みの味に調理してみるのも楽しそうである。四季のないウガンダながら、少しの季節の変化を日々楽しみながら生活をしている私の今回の活動を報告する。
雨季は雨のおかげで牧草も青々としていて牛たちが食べる餌としては申し分ないが、良いことばかりではなかった。過剰な雨の影響で放牧地が雨でぬかるみ、そこで生活している乳牛は乳房炎に罹患しやすく深刻な問題となっていた。安心安全な牛乳を生産するためには、搾乳衛生もさることながら、そういった生活環境の改善も課題となってくるだろう。
12月末日で、2016-2019に実施されていた草の根プロジェクトの参加30農家をひと通りすべて訪問し、フォローアップとしての聞き取り調査と衛生指導を行うことができた。今思えば30農家をすべて訪問するためには様々な苦難があった。一つは、プロジェクトが終わってからの3年で配属先人事がガラッと代わってしまい、当時の状況を知る職員がほとんどいなくなってしまっていたことである。当然訪問に同行してくれる職員は農家の場所も把握しておらず、毎回のごとく道に迷っていた気がする。農家も3年の間に状況は大きく変わっており、オーナーが代わっていたり従業員が一新されていたりと、当時のプロジェクトのことを知っている人もごくわずかになってしまっていた。それでも、プロジェクトでの指導の名残はあり、基本的な搾乳衛生技術は理解しているようである。そして時代の移り変わりの中で、各農家自身がコスト面や技術面を考慮して、自分の牧場に適した方法を模索している。今のムバララの酪農に必要なことは、新しい機械や薬剤を使用した最先端の技術や知識ではなく、各農家が今できる範囲での最良の方法を実施できているかどうかであると思う。私が実施した衛生指導を通して、それが農家にとって最良の方法へとたどり着く“気づき”となってくれていることを切に願っている。現状では30農家すべてが最良の方法を実施できているとは言い難いが、30農家には引き続き周辺農家のお手本となるような安全な牛乳生産に努めてほしい
12月は任地での活動に加え、中間報告会を含む各種イベントが盛りだくさんで、非常に充実していた。今回の中間報告会は国際ボランティアデーが重なっていたこともあり、ほとんどの隊員が上京しており、多くの聴衆の前での発表となった。会場には日本大使も来場されており非常に緊張したが、私たちがどのような活動をしているかを知ってもらう機会ができてよかったと思う。
国際ボランティアデーのイベントとしては、他の協力隊員と一緒に、ストリートチルドレンを保護して子供たちの自立に向けて活動している施設であるマスリタチルドレンビレッジを訪れ、子供たちと一緒に体を動かしたり図画やクラフトを制作したりした。普段の活動ではなかなか子供たちと触れ合う機会はなかったので純粋に楽しかったが、直面している問題を深く理解すると同時に、自分が思うボランティア活動のあり方と、これから自分がどのように社会還元していくかを見つめ直す良い機会になった。
年末年始で配属先も休みに入ると、いつもとはまた違った休日を満喫することができた。
12~1月の期間、教育関連の隊員は学校が休みに入っていることもあり、自分の任地を訪問してくれた。自分の任地でありながらも今までこれといって観光したことがなかったので、案内しながらも楽しむことができた。せっかくの機会なので任地ムバララ周辺の観光スポットに関して2つご紹介したい。ひとつはIgongo culture centreである。ウガンダの西部ムバララはニャンコレ族の文化が根付いており現地語もニャンコレ語なので、ムバララを知る上でその文化を知ることは重要である。ここはニャンコレ族の文化を知ることができる博物館で、スタッフがすべて案内・解説をしてくれるのでムバララを訪れる際はぜひ立ち寄ってほしい。もうひとつは温泉である。ウガンダ国内に温泉が湧いているところが数か所あるが、人が入浴できる温泉は限られている。ムバララ周辺には人が入浴可能な大きな温泉があり、ウガンダ各地から多くの人が療養のために訪れるらしい。私も実際に入浴してみたが、ウガンダで温泉に入れるとは思いもよらず、温泉特有の硫黄の香りの中、心も体も非常にリフレッシュすることができた。ただし、決して水がきれいなわけではないのでご入浴の際は自己責任願いたい。(これが原因だったのか定かではないが、その一週間後、私は腎盂腎炎で人生初の入院をウガンダの地で経験することになる。)
1月中旬には野生のハシビロコウを見ることのできるムバンバ湿地帯や、マーチソン・フォールズ国立公園へのサファリにも訪れた。壮大な滝を眺めゾウやキリンの群れに遭遇することができて、改めてウガンダの自然の豊かさを感じる素晴らしい旅行となった。
ウガンダは、私の配属期間ではさすがに回りきることのできないくらい自然の見どころがまだまだたくさんある。国立公園だけでなく、日常での酪農風景さえも自然の癒しを感じることができる。現在は研究所での検査業務に明け暮れる毎日だが、休みの日に限らずもっといろんな場所に出て、ウガンダの自然に癒されながら活動への活力に繋げていければと思う。
今回は普段の任地での活動に加えて、様々なJICAイベントに参加することで、今の、そしてこれからの、私ができる社会貢献のあり方について深く考えさせられた期間となった。帰国後の社会還元も含め、自分が今できる最良の社会貢献をしていけるように尽力していきたいと思う。
関連リンク
・島田さん活動報告
2022年10月の記事はこちら
2022年7月の記事はこちら
2022年5月の記事はこちら
2022年2月の記事はこちら
・酪農学園大学 WOAH 食の安全コラボレーティングセンター※
国際協力・研究活動のページ
※国際交流課注:
本学獣医学群は、WOAH食の安全コラボレーティングセンターコンソーシアムとしてWOAH加盟国の動物生産における食の安全(Animal Production Food Safety)の向上に貢献しています。酪農はウガンダ国民への栄養供給に重要でありかつ、主要な輸出産業です。本大学連携の取り組みは、2016年から2019年にかけて実施されたJICA草の根技術協力事業「ムバララ県安全な牛乳生産支援プロジェクト」の後継事業として実施されています。