留学報告書(藍さん)2025年度フィンドレー大学ベーシック・アニマルハンドリングプログラム
掲載日:2026.04.23
獣医学類5年 藍 千皓
僕は2026年3月10日〜3月31日の3週間、アメリカ・オハイオ州にあるフィンドレー大学にてベーシック・アニマルハンドリングプログラムに参加しました。僕はアルバイトでの経験で、海外の人とコミュニケーションを上手くとれないことへの悔しさ、言語の壁の大きさを痛感していました。また5年次に様々な場所へ実習に行き、自分の獣医師としての将来像を具体的に考えるようになる中で、海外での経験も視野に入れたいと考えるようになりました。そこで5年次という遅めのタイミングではありましたが、今回このプログラムには実際に英語を使う機会・環境が欲しい、海外の獣医療の考え方や価値観、日本との違いを実際に自分の目で見て知りたい、将来を考える上で視野を広げるきっかけとなる経験がしたいと思い参加しました。
Western farm
ここでは馬に関する様々な実習を行いました。馬の扱い方からお世話、ハンドリグ方法、バンテージ、保定、TPR測定、投薬、採血、筋注などのを実際に行いながら学びました。また、実際の馬のトレーニングや削蹄、歯の治療、整体などを間近で見学させていただきました。そして実際にここで行われた大会も見学する機会がありました。大会の雰囲気、大会に向けた選手たちの格好など一つ一つがとても新鮮な光景でした。またここで訓練された馬が実際にどうような競技に向けて練習しているのかを知ることが出来ました。
English farm
ここでは、馬のお世話と障害馬術競技の練習を実際に見学させて頂きました。トレーニングも馬の年齢や進捗に合わせて様々なものを行っていました。時には馬がパニックになってしまうことや障害物を飛ぶことを拒否してしまうこともみられました。しかし、そこで終了するのではなく、その馬をしっかりとなだめて、障害物を飛びやすいものにして再トライすることで恐怖心がその後に残らないようにしていました。しっかりと乗っている学生一人一人が担当の馬と真剣に向きあっていることを見学しながら感じることができました。
Becket animal science center
ここでは豚や羊、ヤギ、牛など各動物の採血やワクチン接種、TPR測定、耳標の読み方、体重による子豚の畜舎の整理方法などを学びました。前半で座学を行い、そのあとすぐに学んだ内容を実践する形でした。日本の授業よりも人数が少なくまた、座学後すぐに実際に行うことができたのでとても理解が深まりやすかったです。
Animal hospital
2つの動物病院を見学させていただきました。1つ目は、Blanchard Valley Veterinary Clinicというフィンドレー大学の近くにある町の獣医さんの動物病院を見学させていただきました。旦那さんが獣医師で、奥さんが獣医のソーシャルワーカーをされていました。ここでは病院の話はもちろん、獣医のソーシャルワーカーという珍しい職業の奥さんに色々な質問をさせてもらい、この職業の役割や現地の獣医療の価値観などを知ることができました。日本と違い安楽殺がもっと身近な選択肢としてあること。そこには日本よりも動物自身の苦しみやそれと向き合う飼い主さんのキャパシティーなどを考える傾向が日本よりも強いからだと知ることができました。また、伴侶動物と飼い主との距離が近くなることで、亡くなった後の飼い主さんのケア、それを受け止めることになる獣医師側のメンタルケアをすごく重要視していました。日本の獣医療では見たことのない獣医のソーシャルワーカーである奥さんからの話はとても興味深いものが多かったです。
2つ目は、VCA animal hospitalという病院施設だけでなく、リハビリ施設や保護施設などもある大きな病院を見学させていただきました。ここでは、実際に口腔内の腫瘍を切除するオペの補助をさせていただくことができました。このオペは救うためのものというよりも、飼い主さんが安楽殺を受け入れられようにするための最後のオペだとおっしゃっていました。忙しい現場で緊張感もある中でも、症例やその背景、オペで今何を行っているのかなど丁寧に説明していただき、色々な症例について学ぶことができました。
Challenged Champions
ここでは、馬と共に身体障害や知的障害、様々な問題の治療を行うホースセラピーの施設でした。馬に乗りながら運動をすることで、全身のトレーニングになるだけでなく、非言語のコミュニケーションを馬とすることが心の治療にもつながっていくというものでした。実際に、そこに通う患者さんは自閉症で人とのコミュニケーションを苦手とする子供やアメリカならではの退役軍人の方々、移民の方々など様々なそうです。それぞれの問題に動物だからこそできるアプローチを行っていると知り、改めて動物の持つ力の大きさを知ることができました。ここの一回の治療費はとても安く、ほとんどはボランティアで成り立っているとそうです。
Toledo Zoo
ここでは、動物園のバックヤードツアーに参加させていただきました。普段見られない裏側の施設や動物園ならではの各動物に合わせた手術器具なども見ることができました。また、実際に働く獣医師さんともお話をすることができ、アメリカでの動物園獣医師の立ち位置やリアルなお話なども聞くことができました。多くの動物の種類を少人数の獣医師で見ているそうで、動物園獣医師がどれだけ大変かを知ることができました。
感想
今回、本当に参加してよかったと思う一方で、英語に多く触れていた受験の直後のタイミングで、もっと早く留学に挑戦するべきだったとすごく後悔しました。受験期に培った英語力を維持するためにも、継続的に英語に触れ、使う機会を作るべきだったと、低下している自分の英語力に気づいてからすごく感じました。しかし、5年の終わりという遅めのタイミングでの参加だったからこそ、日本で学んできた知識と結び合わせながら、より深く理解を得ることができたとも思います。今回、最も知りたかった海外と日本の獣医療の違いについて、実際の経験を通して理解し、見て学ぶことができました。また、日本の獣医療現場の良さや共通している部分にも改めて少し気づくことができたと思います。一方で、これは取り入れるべき考え方なのではないかと思うものにも出会うことができました。さらに、言語の壁がある中で、海外で獣医師として働くことの難しさも身をもって実感することができました。この経験を今後の勉強や臨床現場で生かしていきたいと思いました。





