留学生と教職課程学生の座談会を実施しました
掲載日:2022.11.23
本学教職課程の授業である「教職実践演習」を履修している学生の有志グループと、本学に在籍している外国人留学生の有志が、11月9日に座談会を実施しました。
きっかけは教職実践演習を履修している学生が海外の義務教育について調べている中で、ぜひ実際に留学生から話を聞きたいという相談を受けたことからです。循環農学類4年生の山口陽太郎さんは「授業の中でSDGsについて学んでいて、その中でも自分たちのグループは教育に注目し、国際的にどういった教育がされているのかを調べるため留学生に話を聞かせてもらいたい」という目的を話してくれました。山口さんの他に角田綾乃さん、澤田壮太さんが参加してくれました。
今回留学生からは台湾の留学生、獣医学研究科博士課程4年生のチェン・イーイン(Chen I-Ying)さんと獣医保健看護学類4年生のリン・ホキン(Lin Pao-Chun)さんの2名が協力してくれることになりました。
まず留学生それぞれが自己紹介としてなぜ酪農学園大学に留学したかについて話してくれました。チェンさんは、本学の山下和人先生の下で麻酔学を学ぶために留学したということでした。チェンさんは台湾の国立中興大学(本学協定校)在学中にも短期研修で本学を2回訪れています。台湾の獣医療は犬や猫が中心だそうですが、本学では馬や牛なども診療できること、そういった生産動物の麻酔学について学びたいと思ったということです。また将来は教員を志望していて、そのためには麻酔学だけではない幅広い知識を得たいと思い、博士号取得を目指して留学したということを話してくれました。
リンさんは中学2~3年生の時から獣医系の勉強をしたいと思っていたそうです。台湾の大学進学も目指していましたが、台湾で獣医学を学べる大学は4つしかないそうです。台湾では獣医の人気が高まっていますが、偏差値が高くなる一方で大学の選択肢も少ないことから日本への留学について考え、その中で動物看護を学ぶという選択肢ができました。台湾には動物看護を学べる学部がまだないそうですが、やはり当初は獣医師を目指すか迷いがあったそうです。ただ日本でもようやく動物看護師が国家資格になり、できることが増えることもあり、今は自分の決断に迷いがなくなったと話してくれました。来年2月の国家試験に向けて今は頑張っているそうです。
2人は台湾の義務教育制度についても紹介してくれました。チェンさんは9年間の義務教育を受けましたが、その後台湾の教育制度が変わり、リンさんは12年間の義務教育を受けています。チェンさんの世代では義務教育は中学校までであったため、高校進学を目指さない人は中学であまり勉強をしなくなる一方、進学を目指す人はより一層勉強しなくてはいけなくなること、その結果進学した先では同期生の学力レベルがだいたい同じであるのでその点では良かったことなどが話されました。
リンさんの世代では高校までが義務教育となり結果としてほぼ9割の高校生が大学進学まで目指すようになったこと、評価の基準も成績だけでなくスポーツやボランティア活動などでポイントが加算されるようになり同期生の中でも学力は幅があったことなどが話されました。
台湾では高校までが義務教育となったことで、社会全体の雰囲気として大学進学が当然となっているそうです。成績以外の評価方法が増えたことで、より幅広い学力の人も進学を目指すことができるようになった側面もあります。これまでの専門学校や技術学校もほとんど大学に変わり大学の数も増えて入りやすくなっている一方で、大学進学しないと就職が難しくなるという雰囲気が12年制義務教育になってより強まったこと、進学しないと自分だけ遅れをとってしまうと感じることや社会からも家族からも「なぜ大学に行かないの?」というプレッシャーがあることなどを話してくれました。「ただ目的がしっかりしているのなら良いが、本当にみんな大学に行く必要があるのか疑問に思うこともある」という言葉が印象的でした。
日本人学生たちからも自分たちが目指していることや、日本の大学生についての話がされました。山口さんたちもコロナ禍での大学生活を送ってきて、日本人同士でもこうして集まって顔を合わせるのはつい最近が初めてのこと、その中でこうして留学生と話ができて本当に良かった、これから自分たちにとって大切なのはこうした「人脈」だと思っている、ということを話してくれました。偶然にも全員が4年生でしたので、コロナ禍で過ごしてきた大学生活の苦労やより一層人との出会いが大切だと思ったことなど、大学生としての率直な思いを一緒に分かち合うことができました。
話しは尽きずあっという間に1時間半が過ぎてしまい、5名はその後も場所を変えて更に話し合いを深めることができたようです。
本学には他にも中国、韓国、タイなどからの留学生が学んでいます。学類などが違うと普段なかなか出会う機会も少ないのですが、今回こうして授業の一環として留学生と日本人学生が交流する場が実現し、普段聞けない話が聞けたことはとても良い機会でした。これからもこうして学内での国際交流がより活発になるよう願っています。