Purdue University 研修報告書

掲載日:2020.03.04

獣医学群獣医保健看護学類4年 今野 樹

〈実習概要〉
実習内容・目的:Purdue University Veterinary Teaching Hospitalの放射線治療科/腫瘍内科において獣医看護師と共に実際に患者の治療・検査等のサポートを行うことで実践経験を積む。また獣医療先進国であるアメリカでの獣医看護師の働き方、獣医師とのチーム医療を学ぶ。
日程:2019年11月18日~2020年1月19日
参加のきっかけ:2018年に同大学の2週間の実習プログラムに参加し、より長い期間で自分の興味のある分野を集中的に学びたいと考えたため。

〈実習詳細〉
2019年11月18日~12月31日(祝日等除く)の期間は放射線治療科で、2020年1月1日~1月19日の期間は腫瘍内科で実習に参加した。
放射線腫瘍科では主に麻酔をかける時や照射が終わってから覚醒までの患者の管理、次の患者の麻酔・照射時に使う器具等の準備を一つの流れとして一日に1頭~5、6頭の治療のサポートを行った。また、放射線治療が終了した患者の再検査や回復が認められずオーナーが希望した場合の安楽死も行った。獣医療の場合放射線治療時は正常部位への放射を防ぐため麻酔が必須となるが、Purdue大学では麻酔管理は獣医ではなく獣医看護師が全て行う。
また麻酔前の健康チェック(体重測定・TPR・BIG3(PCV・TP・血糖値)等)も獣医看護師が行う。獣医師は獣医看護師に対して絶対的な信頼を置いており獣医師による治療・診断・照射時以外は放射線治療のプログラミングや自身の勉強の時間に充てることができる環境ができている。このような環境を日本の動物病院などの獣医療機関でももっと目指していくことで診療や治療の効率化や発展に繋がっていくのではないかと感じた。また12月に安楽死の処置を初めて見学した。以前お世話をした患者だったためとても悲しく無力さを感じたと共に、これからより多くを勉強して一頭でもたくさんの動物を救いオーナーとそのパートナーである動物が少しでも長く健康で幸せな日々を過ごしていってほしいと強く思った。そして病死も安楽死も自然死もこれから先何度も経験していくとは思うがこの初心を忘れない獣医看護師になろうと改めて決意した。Purdue大学の動物病院では安楽死が決定した場合、オーナーは患者の肉球を模った焼物を贈る。また、放射線治療が終了した際には患者の写真と名前入りの賞状とバンダナを贈る。その細やかな気遣いはとても気持ちが良く真似していきたい点であった。

放射線治療にも化学療法にも副作用があり、特に印象に残っている患者は大腿部に照射を行っていた1歳半のゴールデンレトリーバーで、照射部位の裏側に皮膚炎が起こり火傷のような状態になってしまった症例である。副作用が生じてしまった患部消毒と抗炎症を照射時に同時進行で行っており3~4週間で元の皮膚に戻るとのことだった。抗炎症にはブラックティーや緑茶を使用しており、1日2回10~15分間患部をそれらで浸す。実際にその効果は証明されており人の医療現場でも用いられる場合があるそう。その一つの利点は医療従事者ではないオーナーでも安全に扱える点ではないかと思う。Purdue大学の放射線治療科では副作用を起こした患部の抗炎症のためにこれらを使用することは珍しくなく、今までこのような利用方法があることは知らなかったため新しい知識が増える良い経験となった。

2020年1月から実習を行った内科腫瘍科では主に初診の患者の治療計画を行ったり、化学療法や経過観察、再検査などを行った。内科腫瘍科は一日当たりの患者数が多いためそれぞれの患者の担当看護師が決まっており、担当看護師がTPR・採血・身体検査・血圧測定や必要に応じて採尿・採便なども行う。ここでは保定等サポートだけでなく実際に採血や薬の投与も行った。日本では獣医看護師は獣医師の許可がなくては採血はできないため、実習生や学生ではできないことが多い。今回の実習では成功するまで何度も挑戦させて貰い、その度に獣医看護師は犬種や性格、体格ごとのコツをレクチャーして下さった。なかには肥満や首元のブラッシングが十分にされていないダブルコートの犬など血管の場所が分かりにくかったり毛玉に邪魔されて真っ直ぐに打てない場合もあった。今まで診療や治療に直接体型や被毛が大きく関係した経験はなかったが、私も一人の飼い主としてペットの健康管理や被毛の管理は安全で迅速な医療を受けるために徹底していこうと思い、また獣医看護師としてはその大切さを伝えていかなければならないと感じた。Purdue大学の腫瘍科には圧倒的に大型犬(特にゴールデンレトリーバー)が多く、保定も簡単ではなかったがそのコツをつかむことができとても良い実習を行うことができたと思う。また暴れやすい子の保定の際は無理をせず保定者を増やしたり、保定具を使うなどの判断がとても早く、猫など保定や治療等が大きなストレスになり得る場合や保定者が怪我をする可能性がある場合は鎮静を使っており、より動物のストレスを少なくすることができている上安全面を確保できており、これも日本の動物病院とは違う点で真似していくべきものではないかと思った。

今回の実習期間では11月には感謝祭が、12月にはクリスマスや大晦日、1月にはお正月もあり、アメリカならではの文化を経験することもできそういった面でも貴重な体験をすることができた。International houseと呼ばれるPurdue大学が所有する海外からの実習生が宿泊することのできるシェアハウスに滞在していたが、そこではインドやコロンビア、中国、ポーランドなど様々な国で獣医やその学生をしている方々と出会うことができた。それぞれの国での獣医の働き方などお話することができ、それもまたおもしろくそれぞれの国の獣医療の現状を知ることのできる良い経験であったと思う。また実習中には昨年6月に酪農学園大学で研修に参加していた獣医看護学生にも再会することができ、学校での実習や授業の話をしてくれたりその違いはとても勉強になった。また彼女たちは様々な面で私の実習をサポートしてくれ、生活面でも何度も助けてくれた。出会いと再会に感謝し、住む国は違えどこれからも同じ職を持つもの同士としてこれからも助け合っていきたい。

そしてこの場を借りて、Purdue University Veterinary Teaching Hospitalの獣医・獣医看護師の方々をはじめ、国際交流課の方々、酪農学園大学附属動物医療センター 腫瘍科の先生方、動物行動生態研究室のみなさん、今回の留学をサポートしてくださったすべての方に心から感謝申し上げます。

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