海外農業研修を振り返って(3)「実習配属農場の概況ーーネブラスカ州養豚場」

掲載日:2019.10.02

環境共生学類 中籔 大和

農場の概要
現在のボスの叔父が2頭の成豚から始めた中~大規模程度の養豚場。ボスの叔父からボスの父親、そして現在のボスの兄へと引き継がれてきた歴史があり、近々ボスの息子に引き継がれる予定がある。農場では肥育は行わず、子豚を離乳するまで育てて肥育農場に出荷する繁殖農家。農場での主要言語は英語だが、スペイン語を使用してメキシコ人労働者とコミュニケーションを取ることもある。

労働力
(自家 1人) (常時雇用 10人) (ピーク時の臨時雇用0~6人) 
(アメリカ国外からの研修生  12人※日本人2名)
 
周辺の気候
ネブラスカ州は、夏は暑く高湿度でほぼ晴れ、冬は-20℃を下回る日があるほど寒く、風が強くて空気が乾燥している。夏場は晴れている日が多いが、冬は曇りが多い。アメリカの真ん中に位置している為海は無く津波などの自然災害に見舞われる危険性はないが、春には大雨が降って鉄砲水が発生して避難警報が出ることがある。自分が生活していた下宿先でも大雨が降ったあとに家の前の道路が冠水したことがあった。農場があった地域の立地は山などが無い平地で、ネブラスカ州を通るコーンラインにかぶるように複数の養豚場が間隔をあけて点在している。
 
農場の特徴
ネブラスカ州のリンカーンから西に車で1時間30分ほどの場所に作られた養豚場。2年前までは現在の経営者の兄が代表として農場の管理をしていたが、現在は弟が引き継ぎ今後近いうちに弟の息子に引き継がれる予定だ。私が働いていた農場は代々農場主一族に受け継がれて新しい経営者が農場経営を学ぶ場としても利用されているようだった。              

農場の規模は母豚が7000頭と、アメリカでは中規模から大規模の農場だ。現在の経営者は私が働いていた7000頭規模の養豚場の他にも5000頭規模の養豚場を2つ所有している。

私が働いていた農場の特徴としては、アメリカ国外から農業研修生を労働力の主力として受け入れていることだ。研修生達は全員で同じ一軒家に住み、生活をともにしている。仕事では研修生が7人前後のチームに分けられて作業を行っている。研修生のチームの他にメキシコ人ワーカー達のチームも存在する。子豚の繁殖に使用している母豚の品種はヨークシャーとランドレースで、人工授精に用いる精子にはピエトレンとデュロック種を使用している。

農場の歴史
現在の経営者の叔父が70年前に2頭から始めたが創業者が亡くなられた為、創業者の弟(現経営者の父親)が30歳の時に引き継ぐ。引き継いだ時の頭数は100頭前後。100頭までは自家繁殖のみで増やした。1995年から人工授精を開始、2007年から繁殖農場へと経営方針を変更した。2018年経営者が現在の経営者へと変更となる。 

日本人研修生の作業内容
農場ではいくつかのチームに分かれて作業をするのだが、今回は自分が経験した2つのチームの作業内容について説明する。

チームA
半日延々と分娩補助。
am3:00~pm3:00またはpm3:00~am3:00。
出産を迎えた母豚(一日20~70頭ほど)の子宮内で子豚がスタックするなどのトラブルが発生する為、子宮内から子豚を取り上げて産まれた子豚が死なないように体液をふき取り、子豚を乾かす為に木屑を子豚に振り掛ける。その他に母豚の出産が遅れている時や初乳が出ない時に妊娠ホルモンを注射して母豚のサポートを行う。稀に出産時にパニックを起こして子豚に襲い掛かる母豚がいるので、そういった母豚に神経遮断薬を注射することもある。

チームB
チームBではAとは違い様々な作業を行う。
1頭の母豚に対して子豚が産まれすぎたり少なすぎたりするので、その日産まれた子豚の頭数の管理。母豚を移動させる。病気の母豚子豚の治療。母豚子豚の生存確認、死骸の廃棄、ワクチンや薬の注射、屠殺。子豚の去勢、断尾、牙きり。豚舎の清掃、消毒。餌、水の管理。仕事道具の清掃。出産結果の記録。などなど、様々なことを行う。

休日の過ごし方
研修生達で使える車が支給されているので、休日には他の研修生達とリンカーンなどの大きな町に買い物などをしに出かけていることが多く、休日もフィリピンやベトナムからの研修生と一緒にいる事が多かった。冬場は雪が多いので外出を控えていたが、春から初夏にかけては州立公園の湖や近くの池に毎週釣りをしに行っていた。住んでいた町自体は人口1400人と、とても小さかったので遊びに行くとなると車で出かける必要があった。

実習配属農場の概況のまとめ
養豚場での研修では、仕事に対する考え方について学んだ事が多かったと私は受け止めている。チームごとに違う場所、違う時間に違う作業をした場合会社全体でのコミュニケーションが疎かになり全体での作業に支障が出てしまう事がある。そうならないように、チームごとに細かなデータをとることで全体の動きを把握する事ができるシステムを作ることができていた。しかし、やはり実際他の労働者と直接コミュニケーションを取ることが必要だと感じる事もあった。例えば、夜勤で働いているチームは日勤の上司達に仕事を見てもらうことがなく、トラブルが起こった時に対処できる人物がいない状況があった為、上司が部下の仕事を直接確認する機会の重要性を感じた。

養豚場では野菜会社以上に自分で考えて解決する力を求められる事が多く、トラブルに直面した時の考え方が身についた。この経験は今後日本で就職した時も活かすことができる良い経験となっただろう。

今回養豚場で働くという経験をして私は、将来的に養豚業に従事するという選択肢も自分の中で考えられるようになったのが、一番の収穫だと私は考えている。帰国後、短期のインターンで養豚場での短期労働を経験した後に、大学卒業後の進路として今回の経験を活かそうと考えている。

海外農業研修を振り返って(3)「実習配属農場の概況ーーネブラスカ州養豚場」

休日の一コマ

海外農業研修を振り返って(3)「実習配属農場の概況ーーネブラスカ州養豚場」

会社の同僚たち

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作業風景