海外農業研修を振り返って(2)「実習配属農場の概況ーーワシントン州野菜会社」

掲載日:2019.10.02

環境共生学類 中籔 大和

農場の概要
現在日系3世の農場主兄弟を中心に経営するワシントン州の大規模野菜会社。主力商品として、オーガニック野菜に付加価値をつけて販売している。広大な農地で季節ごとに多品目の野菜を栽培している。特に、春はアスパラガス、夏はウリ科植物とスイートコーン、秋はスクウォッシュ類が主な品目だ。

労働力
メキシコ人、ハイチ人季節労働者のピーク時雇用人数:約300人前後
自家労働力:5人、常時雇用人数:20人

農場周辺の気候
近くには大きな河川があるため、その河川から砂地に水を引き農地として利用している。その他の水源としては、雪解け水を主な水源として利用している為、年によっては雪があまり降らず水不足になる可能性もあるが、その対策としてマルチを張り、点滴灌水を行うことで安定して農作物を生産販売している。

農地周辺は、農地として利用している土地が元は砂地であった為、空気が乾燥していて山火事や砂嵐などの自然災害に見舞われる事も多々あった。また、農場周辺の気候は、朝と夜の温度差がとても激しく、20度以上違う日が毎日のように続いていた。8月は特に気温の差が激しく、もっとも気温に差があった日は、朝は20℃だったのに対して日中は45℃と、一日で25℃もの温度差があった。

農場の特徴
農作物をより早く出荷するために、ウォータークーラーを使い野菜の冷却と洗浄を同時に行えるようになっている。また、箱詰めされて製品になったものは出荷までの間アンモニアガスを使ったクーラー室にストックされている。

農場のその他の特徴としては、メキシコの大規模農場をモデルとした経営理論を農場主が率先して取り入れる様にしているため、メキシコ人季節労働者が労働力のほとんどを占めている。

生産品目のほとんどのものについてオーガニックとそうでないものを生産している。例えば、アスパラガスはオーガニックとそうでないもので1箱約US$20ほど値段に違いがあり、大きな収入源になっている。
農場周辺には他の大規模農場も隣接している為、お互いの会社でコミュニケーションをとり、不作の作物の売買を行うことで安定した量の作物を毎年卸業者に供給できるようにするなどしている。 

日本人研修生の作業内容
農作物のパッキング、スタッキング:
フィールドワーカー達が栽培、収穫したものをメキシコ人ワーカー達と選別、箱詰めをする。その後、規定のパレットの上に決められた量と積み方で人力によってスタッキングを行う。
パッキングは品目によって同じ工場内にあるそれぞれ異なる作業場で行うが、1年を通して同じ人間が全ての品目の野菜を製品化してスタッキングを行う。その為、繁忙期になると1日で労働時間が19時間を超える事もある。

日本人研修生はパッキングよりもスタッキングに回る事が多く、製品によって積み方は異なるが、1箱20パウンド程度の製品なら40箱前後、50パウンド程度のものなら30箱前後をパレットの上に積む。

パッキングの作業内容は品目別と、オーガニックかそうでないかで分けられたレーンに、ビンに収穫された農作物を流して洗浄、仕分けして箱に詰めるというものだ。まずはレーンに流されたまだ土の付いている農作物をブラシの付いたローラーに流す事で土を落とし、次にメキシコ人ワーカーが並んでいるレーンに流して仕分けしたものを別のメキシコ人が箱詰めする。ピーマンやきゅうりなどの品目は洗浄した後で食用ワックスを霧吹きを使い吹き付けて艶を出した後に選別などの作業を行っていた。そうやって製品化されたものを別の労働者達がパレットまで持って運び積み上げて規定数になったものをフォークリフトドライバーがストレージやトラクターに運び出荷していた。
 
休日の過ごし方
1年を通して毎週日曜日は休日である。農場から日本人研修生に車が支給されているので、その車を運転して車で20分ほどのところにある街に買い物に行ったり、街の博物館に行ったりする事が多かった。街の博物館では日本人移民の歴史や、農場の歴史についても紹介されていた。

その他の娯楽としては、近くに大きな河があり、バス釣りを楽しむなどしていた。農場の周りは自然と人間がうまく生活空間を住み分けていたため、近代的な遊びと自然界の中での遊びの両方を楽しむ事ができた。

実習配属農場の概況まとめ
一つの農場で多品目の農作物を生産していた為、様々な農作物の知識と、メキシコ人労働者とのコミュニケーションをとるために必要となるスペイン語を少し身につけることができた。そして、アメリカの大規模農場の経営形態と、労働の現場について知る事ができた。

アメリカの大規模農場の経営形態と労働の現場について直に知る事で、日本で現在問題となっている労働力不足をどのように解決するか、そして今後日本でも行われる政策である国外からの労働力をどのように生かしていくかについて考えるヒントを得ることができた。日本には現在の私のような技能実習生という名目で国外からの労働力に頼る機会が増えている。今後国外からの労働力が増えていく中で、日本の農業にそった経営だけではなく、その労働力を生かした環境と作業を新たに発掘し、取り入れる事が必要になると私は今回の農場での経験から学び考えた。その為には、日本語と英語だけではなく、その労働力とコミュニケーションをとる言語の取得と、もっと東南アジアなど労働力の元となる地域の農業を知って取り入れていく事が必要となるだろう。

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休日の一コマ

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