2023年度 家庭菜園講座「地力の魅力」における講演内容の質問に回答します

掲載日:2024.03.28

2024年2月17日(土)に開催いたしました家庭菜園講座「地力の魅力」にて寄せられた質問について農食環境学群循環農学類 小八重善裕准教授が回答します。

【質問1】春に牛フン、鶏フン、苦土石灰を散布し耕運機で耕運後、3~4週間後に耕運機で畝切りをしているが、土作りには良くないのでしょうか。

(回答)その感じからすると、春に堆肥を撒かれていますか。あるいは秋野菜の前などでしょうか。腐熟度が甘い堆肥でしたら、数カ月は土の中に入れておいた方がいいと思います。秋に撒いて、春まで雪の下に置いておき、春に耕起をします。未熟の堆肥ですと、土の中で養分が暴れて、よからぬ微生物が増えて病気になります。数年寝かした完熟のものでしたら、3~4週間で十分だと思います。畝を立てて栽培を始めてもいいでしょう。耕起自体に、それほど悪いことはありません。やり過ぎは禁物です。

【質問2】土壌処理除草剤は市販されているおすすめを教えてください。

(回答)除草よりも草を上手に生やすことを推奨しているため、土壌処理除草剤は使用しておりません。

【質問3】小八重先生の家庭菜園で最も大切にしているポイントを教えてください。

(回答)見た目です。見ていて綺麗な方がいいですね。花とかも咲いている方がいいです。植え合わせで、思わぬいい相乗効果が出ると嬉しくなります。生産コスト度外視の贅沢な栽培ができるのが、家庭菜園の醍醐味ですね。スーパーの野菜には決して真似できない、規格外のおいしさを求めています。

【質問4】病害(例えばうどんこ病)の作物残渣をすき込んでも問題ないですか。

(回答)ものすごく病気が出る土壌は、そもそもが弱っていますので、そこで出てしまった病気の残渣をすき込むと、残渣を分解する力も弱く、それが感染源になって残ります。健康な土でしたら、多少の病気(特定の病原体が過剰増殖した状態)の残渣でも、土に入れられれば、多種多様な微生物にもみくちゃにされて、速やかに分解されてなくなります。健康な土は、生態系バランスが優れていて、病気を抑える働きがあります。

【質問5】有機物により地力がついた土地は連作可能なのですか。

(回答)基本的には可能です。でも栄養バランスは重要です。収穫物を収奪してばかりいると、土壌の養分は偏ってしまいます。持ち出した分を戻してあげれば、持続します。そこが腕の見せ所ですね。戻すのは、簡単ではありません。堆肥などで、肥料成分の尖りを均平化して、畑を一つの生態系として、数年かけて物質を循環させるようなイメージがいいと思います。

【質問6】プランター用土の再利用方法は

(回答)マンションなどでしたら、思い切って捨てたほうがいいと思います。プランターの土は、過酷な栽培環境ですから(極端な乾燥などに見舞われています)、地力が著しく落ちています。回復は困難です。もしご自宅にお庭があって、フレッシュな土が手に入るなら、その畑に混ぜこんで、それをプランダーに詰めたほうがいいです。ただ土が多いと、重く、水はけにも難がありますから、バーミキュライト、パーライト、pH調整したピートモスなどで、改良する必要があるでしょう。

【質問7】粘着テープ(黄)はどこで売っていますか。緩効性肥料はどこで売っていますか。

(回答)大きなホームセンターならあるのではないでしょうか。緩効性の肥料は、有機物を多く含むものがおすすめです。

【質問8】スギナの雑草対策について教えてください。スギナの根を養分にする方法はありますか。

(回答)ある程度は放っておけばいいです。物によりますが、背の高い作物なら、日光の奪い合いになることはありません。いろいろな草が増えて、土の中に多様な根が伸びていると、スギナもだんだん減ってきます。スギナ自体は、ご存知の通り、強い根を何mも伸ばします。土の深いところから、水が上がってくる道を作ってくれます。逆に、水はけの悪い土に、水の道を作ってくれます。しかしたくさんスギナが生えるということは、スギナが根を張って、土を改善する余地が残っているということ(つまり他の植物があまり根を張っていない、育てない)ですから、土に何か問題がありそうです。

【質問9】有機物の投入には少なからず土を掘る必要があると思いますが、土づくりの視点からみれば根の生態系を破壊してでもやるしかないのでしょうか。

(回答)掘る必要はありません。表面においておけばいいです。風で飛ばされそうなら、少しすき込むか、作物の株間に敷いてあげると動きません。ただし、有機物を表面に重ねておくと、雑草を抑えられていいのですが、植物が生えないということは、そこに新鮮な光合成産物が供給されないことになります。そこでは根の量も多くはありませんから、あまりいいことではありません。おっしゃる通り、少しすき込んだ方が、土のためにはいい部分もあります。草も生えます。軽く耕起することで、土が活性化されます。有機物を入れるのなら、耕起のダメージはすぐに修復されますし、軽度の耕起は、栽培のしやすさ、適期の除草など、色々なメリットを持っています。

【質問10】土づくりの具体的方法の説明をいただきたい

(回答)具体的には、畑(土)次第ですので、各自が土を理解して、よく観察し、そこに適した方策を取る必要があります。これといった方法は、一つしかありません。土壌の生態系を整えること。これが肝心です。それには有機が必要です。有機の機は「生態系」です。生き物の健全な営み。それがある土を有機と言います。それをつくるためには、土が有機物を多く含み、微生物のエサがたくさんあることが重要です。

【質問11】スーダングラスを大きく育てて秋に刈って敷ワラ、マルチ代わりに利用するのが夢です。刈ってからスーダングラスを春までにとっておく場所と方法を教えてください。

(回答)もし可能なら、納屋を立ててください。というのは冗談ですが、スーダングラスの後作で栽培をするのなら、秋に刈らずに倒して、春まで置いておくというのも手かと思います。倒すタイミングが重要です。登熟期の前です。福島大学の金子信博先生が詳しいです。家の光協会が出している「やさい畑」2023年10月秋号に詳しく載っています。

【質問12】通常の農家に対する指導・教育はされているのですか。

(回答)肥料会社からの依頼で、勉強会で話をしていたりします。若い農家の方が参加されます。若い人ほど今の栽培に危機感を持っています。有機的な、新しい方法に関心を持っている農家の方が増えています。

【質問13】家庭菜園(狭い土地)に限定して無肥料・無農薬の基本を教えてください。

(回答)狭い土地でなら、無肥料・無農薬をぜひともお勧めします。その基本は、残飯や雑草などを庭の隅などに積んで置き、簡単な堆肥を作って肥料にすることです。いわゆるコンポストですね。土に肥料が多すぎるなら、コンポストの投入は避けてください。肥料が少ないなら有効です。雑草が生えますか?よく生えるなら、肥料は十分あります。生えないなら、そこはかなり荒れています。コンポストなどの有機物をたくさん入れて、根を多く張る作物(ヒマワリ、トウモロコシなど)でも植えるか、雑草を生やすかして、土を作ることからのスタートです。

皆様のご参考になれば幸いです。今後とも本学の市民公開講座を何卒よろしくお願いいたします。