2023年度 タイ・カセサート大学単位互換プログラム 11月報告書(岡本さん)
掲載日:2023.12.21
タイ・カセサート大学単位互換プログラム
月末報告書(11月)
獣医学群獣医学類5年 岡本いぶき (Ibuki Okamoto)
11月でも30℃を超える常夏のタイでの充実した留学生活は、飛ぶように過ぎていきます。私たちは11月中旬までをカンペンセン(KPS)キャンパスで過ごし、その後HuaHin(フアヒン)に移動して小動物病院でのクリニカルローテーションを1カ月間行います。今回は、大好きなKPSでの最後の授業と生活、王室の保養地として知られるリゾート地フアヒンでの生活について書きます。
授業について
11月の初めの週は、exotic animal(エキゾチックアニマル)の授業を受けました。exotic clinicにはオウム、うさぎ、ハリネズミをはじめ、鶏、亀、モモンガ、フクロウなど、更にはワニ、カピバラ、ジャコウネコなど、日本ではまず見ることのない動物が数多く来院します。毎日やってくる動物たちのあまりの多様さに、「やはりここは日本じゃなくタイなんだ!」と改めて実感したとともに、そんなタイだからこその学びにあふれるこの授業を、毎日とても楽しく受けることができました。うさぎやフクロウの採血、身体検査などは、これまでexotic animalの治療を経験したことがなかった私にとって、非常に新鮮で楽しいものでした。また、バンコク近郊のprivate zooにカピバラの脛骨骨折の経過観察として往診に行く機会がありました。オーナー自らが園内(自宅)を案内してくださり、これまで見たことのない珍しい動物と触れ合うことができました。ナマケモノやフラミンゴを抱っこさせてもらいコモドドラゴンを見て、40歳のすっぽんにフルーツをあげ…、本当に貴重な体験をさせていただきました。ぜひ下記の写真をご参照ください。exotic clinicの先生方は皆、優しく穏やかで、exotic animalに関する知識がほとんどない私にも分かるように丁寧に根気強く説明して下さいました(カピバラやワニのレントゲンなんて初めて見ました!)。近年は日本でもexotic animalを飼う人が増えています。これまで日本で詳しく学ぶ機会がなかったのですが、獣医師として働く上で今後必要になる知識だと思います。タイのexotic clinicでの治療や授業を通して経験したことを忘れずに、帰国後も引き続き、exotic animalの勉強を続けていきたいと思いました。
1週目のexotic animalに引き続き2週目のswine(豚)の授業も、日本ではあまり深く学んだことのない分野でした。初日から専門用語の嵐で頭がパンクしかけましたが、本当に優しいKUの学生と、根気強く教えてくださった先生方のおかげでなんとか頑張ることができました。授業では実際にASF(アフリカ豚熱)の発生がある養豚場を訪れ、飼養方法などの問題点の整理、採血や唾液などのサンプル採取、ASFウイルスの残留調査を行いました。また豚の剖検も行いました。金曜日の発表を前に北大の2人と酪農大の5人、合わせて7人でプレゼンテーションを作成しました。剖検の結果を元に、考えられる疾患を調べ英語でまとめていく作業はなかなか大変で、夜中までかかってやっと作り上げることができました。友人たちと苦労しながらも成功させたプレゼンテーションは、忘れられない良い思い出になりました。
3週目は病理学の授業でした。そしてこの週は、KPSキャンパスで授業を受ける最後の週でもありました。正直KPSが大好き過ぎて、離れたくない気持ちでいっぱいのまま1週間を過ごしました(笑)。 このクラスでは血液塗沫標本を観察し、小テスト形式でひたすら寄生虫を探した後、実際に免疫組織染色やPCRを用いて診断を行いました。この顕微鏡での寄生虫探しがなかなか難しく、「これだ!」と思って先生に判定を仰ぐと、「これはアーチファクト(人工物)」と一蹴されました。当たって砕けろ精神で何度もトライしましたが、その度に無情にも「アーチファクト」…(涙)。そしてついに求める寄生虫を見つけた時、それはもう嬉しくて嬉しくて、思わず先生と抱擁を交わしました。先生も(やっとか)とほっとしているように見えました(とんでもなく優しくて大好きな先生です。)。また、別日には鶏とアヒルの剖検も行い、解剖学的違い等を実際に目で見て確認し、学ぶことが出来ました。週の半ばに病理の先生から「まだ食べていなくて食べてみたいユニークなタイ料理はない?」と聞かれました。私たちが思いつくままいろいろと述べていくと、なんと次の日にその食べ物を実際に買ってきてくれるという、おもてなしの塊みたいなことをしてくださいました。クリスピー芋虫、キャットフィッシュ等が並ぶ、それはそれは愉快な食卓となりました。ありがとうございました。
またこの週は、北海道大学から来ていた2人と過ごす最後の1週間でもありました。2ヶ月という短い期間でしたが、共に充実した時間をタイで過ごすことができ楽しかったです。関西出身の2人のコミカルな会話はまるでコントを見ているようで、いつも周りを明るく盛り上げてくれていました。2人のタイでの生活をまとめたプレゼン発表とその後のコメントを聞いた時には思わず泣きそうになりましたが、なんとか堪えました。本当です。私たち酪農学園大学の学生の最後のプレゼン発表はきっと、2人はオンラインで聴いて泣いてくれるだろうと思います。日本で待っててね。また会おう!
さて11月半ば、いよいよフアヒンに移動して、HuaHin Hospitalでの生活と学びが始まりました。ここではOPD(外来診療)、surgery(手術)、CCU(Clitical Care Unit集中治療室)、IPD(Inpatient Department入院病棟)の4つのunitをローテーション形式で1週間ずつ、4週間かけて回るスケジュールとなっており、私はOPDからスタートしました。OPDでは一般外来診療の他に曜日ごとにスペシャルクリニックとして専門的な外来があります。私は月曜日は一般外来、火曜日は眼科、水曜日はエキゾチックアニマル、木曜日に消化器系、金曜日は超音波の診療に参加しました。フアヒンには若い先生がとても多く、どの先生もとても丁寧に教えてくれました。またHuaHin Hospitalには外国の患者さんが多いため、タイ語だけでなく英語を使って診療する機会が普通にありました。先生方は診療はもちろん、冗談を言ったり世間話をしたりなどのコミュニケーションも英語で当たり前にこなしていたことが印象的でした。
2週目に参加したsurgery unitはその名の通り手術専門の科で、一日中ひたすらにオペをこなします。ひとえにオペといっても軟部外科や整形外科、眼科など様々な分野のオペが行われているのですが、一週間を通して様々なオペの助手に入らせていただき、非常に勉強になりました。タイでは、野犬に噛まれたり、車やバイクに撥ねられて骨折や脱臼をした犬猫の症例が日本と比べてとても多いです。さらには飼い主さんの希望や金銭的な問題で最適な治療をしてあげられないこともあるのですが、その中でも最善を尽くしてなんとか動物を救ってあげたい、という先生方の姿勢に感銘を受けました。この科にはこの病院のボス、自称“ヘンタイ”先生(以前の日本からの留学生に教えてもらったそうです)ことDr.Pongがいるのですが、話に聞いていた通りの面白い先生で、常に冗談を言って笑わせてくれました。手術専門の科ということもあり、時間は他の科と比べると不規則で、精神的にも体力的にもタフさが求められる場所ではあります。それでも私がKUの学生だったらここで勉強したい!と思うほどに、学ぶにはもってこいの環境でした。
タイでの生活・観光について
11月の週末は主にプーケット、アユタヤなどの観光地に足を運びました。プーケットではツアーに参加して島を巡ったのですが、このツアーがかなり最高でした。道中にシュノーケリングやサップなどのマリンスポーツを楽しむスポットがたくさんあり、昼食のブッフェも美味しかったです。島を3つ回るツアーでしたが、道中ツアーらしい説明等はほとんどなく(タイっぽい)、まったりと海の上を楽しむことが出来ました。訪れた島の中でも、ハリウッド映画のロケ地としても知られるマヤベイの海は別格で、表現する言葉が出ないほど綺麗でした。タイに来たら絶対にまた訪れたい場所のひとつになりました。プーケットに行く際は是非このツアーに参加することをおすすめします。
別の週末には、去年このプログラムで3ヶ月間酪農学園大学に来ていたタイの友人2人と再会することができ、素敵なカフェに連れて行ってもらいました。今でも、お互いに連絡を取り合って交流を続けられていてとても嬉しいです。カフェはハリー・ポッターをモチーフにしたような不思議なお店で、メニューも面白く斬新なものが多かったです(ダニそっくりのケーキやポリジュース薬のドリンクなど)。
私たちが今生活しているフアヒンは、時の流れが本当にゆったりと感じられる素敵な場所です。寮から自転車を10分ほど走らせると目の前には海に広がり、リラックスした時間を過ごすことができます。またリゾート地だということもあり、タイ人より欧米系の人の方が多い印象を受けました。マーケットは、もはやタイではない別の国にいるような気分でまた楽しいです。KPSを離れる際、KUの友人や先生方全員から(本当に全員)「フアヒンはいいよ」「フアヒンは本当に素敵な場所」と聞いており、「KPSよりフアヒンが気に入ってKPSのことなんてすぐ忘れるよ」(by天邪鬼な某大動物獣医師、ピーミチ)とまで言われていました。KPSが大好きだった私は正直半信半疑だったのですが、来てみてその意味がわかりました。KPSとはまた違うフアヒンならでは環境の中で、たくさんのことを学び、吸収し、また同時に楽しむことができていると感じています。ここでの残りの生活も、存分に楽しみたいと思います。でも私はKPSも変わらず大好きです。
この留学も残すところ1ヶ月を切りました。あまりにもあっという間に時が過ぎて戸惑う程ですが、毎日毎日を大切に、タイならではの学びを少しでも多く吸収できるように日々過ごしていきたいと思います。
友人から、「北海道は連日雪が降っている」という話を聞いているため、あまり帰りたくありません(笑)。寒暖差で風邪を引くこと間違いなしです。暖かい国最高。タイ最高。