2023年度 アルバータ大学夏季研修プログラム 報告書 (松井さん)

掲載日:2023.11.02

2023年度カナダ・アルバータ大学夏季研修プログラム 報告書

獣学群獣医学類3年 松井瑞嬉(Mizuki Matsui)

私は今、この報告書を帰国した日に書いています。実際に日本の自分の家で、この1か月を振り返ってまず初めに思い出すのは、エドモントンで出会った人たちです。ホストマザーのStephanie、授業の先生だったEvelyn先生、スタッフの方々、同じプログラムに来ていた日本の大学生、アルバータ大学の学生など、たった1か月でも本当にたくさんの人と会って、話すことができました。今回参加した目的の中にも色んな人と出会い、話すという目的がありましたが、そこが1番印象に残るとは予想してはいませんでした。日本では獣医学を学んで同じ感覚を持つ人と関わることがどうしても多くなってしまうので、違う学問を学んでいる学生やカナダという異国で育った人の新しい考え方は多くの刺激になりました。

ホストマザーはベジタリアンで、動物を殺したくないという理由で高校生の時からベジタリアンになったと言っていました。もちろん私にはお肉を含んだ料理も提供してくれて私だけ時々お肉を食べていました。日本では私の周りにベジタリアンの人がいた経験がなく、時々のベジタリアン生活はとても貴重な体験でした。ベジバーガー、ベジタリアンのキッシュ、ベジタリアンのラザニアなどを食べました。タンパク質をとるために乳製品や豆を利用すると教えてくれました。私も今までお肉を食べる必要性を考えることがあったため日本でもベジタリアン生活をしてみてみようと思うきっかけになりました。

また、ホストマザーはカナダの先住民族との歴史、多文化主義、LGBTQについてなど本当に色んなことを教えてくれました。カナダは色んな国からの移民がいることは有名でしたがエドモントンで生活していても、頭にターバンを巻いている人や、頭を布で覆っている人など本当に色々な人種の人がいました。“カナダ人”という人の方が少ない印象を持ちました。ホストマザーも見た目はカナダ人ですが、先住民族の血が混ざっていると言っていました。ホストマザーと話している中で1番印象的だったのは私が「カナダ人とアメリカ人の違いは?」と聞いたときに、「世界みんな同じだよ。どこの国でもいい人はいる。」と答えてくれたことです。“日本人”が大半の日本にいると、無意識に人を住む国の違いで捉えてしまいます。ホストマザーは職場で色んな国の人と働いていて、色んな国に行った経験があり、どこの国にもいい人はいて、人を国で捉えてはいけないということを教えてくれました。今後外国の人と関わる機会があっても、国という背景無しに1人の人として関わる大切さを学びました。

今回のプログラムはCommunication Skills for Global Citizenshipというクラスで月曜日から金曜日の8時30分から12時30分(30分休憩)まで毎日1つのテーマについての英語の授業がありました。私のクラスでは授業中や休憩中でも日本語を話すと成績が下がるルールがあったため、日本人同士でも英語で話していました。最初は本当になんだか恥ずかしくて嫌だったのが、最後の方では英語で話すのが当たり前になっていて今まで日本人と英語で会話することに対して抵抗を感じていたのが無くなりました。特に印象的だった授業テーマは多文化主義や持続可能性(SDGs)です。多文化主義がテーマの授業では日本は多文化主義になれるか?など普段考えもしないことをみんなと英語で議論しました。難しい課題を英語で議論するのは難しかったですが、日本は外国人を今後より多く受け入れていかなければいけないと思うので、そうなった時に自分は何ができるか、何をするべきなのかを考えるきっかけになりました。持続可能性についての授業では、持続可能性についてのzero wasteのTEDトーク、持続可能な食事とは?持続可能な世界についてプレゼンしよう!など持続可能性に向けて自分は何ができるかを深く考え、行動に移す大切さを感じました。

私は生き物の保全や野生動物との軋轢の問題について興味を持っていて、出発前に国際交流課の方にアルバータ大学の環境保全を教えている先生にお話を伺いたいと伝えていました。その結果、現地のスタッフさんの協力もあり、アルバータ大学で有名な先生にお話を伺うことができました。その先生ははとても優しく丁寧に私の質問に答えてくれたため、英語のリスニングがとても不安でしたが、理解することができました。カナダでは人の動物に対するイメージの違いによって、動物の扱いが変わるとおっしゃっていたのが印象的でした。例えば、シカは「美しい」イメージを持つため畑にいても追い払うだけですが、スカンクやコウモリは「怖い」イメージを持つため駆除されます。私は、シカは駆除対象というイメージしか持っていなかったので、国によって人が動物に対してもつイメージは異なり、イメージというのは野生動物の保護管理において意外にも重要なことなのだと分かりました。また私が、人の考え方や行動を変えるにはどうすればよいかと質問した時、先生は「それは難しく、人の行動を変えるには自分が行動するしかない。簡単ではない。」と教えてくれました。先生は生き物についてのテレビ番組を昔やっていて、とても影響力がある人だと思っていましたが、そのような人でも、人の行動を変えることは難しいと感じるのかと驚いたのを覚えています。

今回の留学では、アルバータ大学の研究農場も訪問することができました。大学農場は久富さんという方に案内していただきました。久富さんはアルバータ大学の大学院に社会人で進学した方です。私はアルバータ大学に来て、海外の大学のスケールの大きさに驚き、海外で学びたい!!という気持ちがとても強くなっていたので、このタイミングで久富さんにお会いできて、お話を伺えたのはとても光栄でした。農場見学では、日本では私が知る限り見たことのない子牛が背中をスリスリするための機械や、牛乳を搾る機械、水が入っているマットなどを見ることができました。カナダの牧場ではいかに効率的に業務を行うかを重視するため、よりよい機械の開発する研究が盛んに行われているそうです。久富さんは日本で5年間働いた後、アルバータ大学の院に留学したため海外の現場そのまま鵜呑みにせずに済んだと後日伺えたことが印象的でした。私は海外へ学びに行くことや海外で働くことに興味があったのですが、まずは日本で働いて日本の現状を知ったうえで海外に行くことでより学びが深まると今後の進路の参考になりました。

留学は全ての時間を自分のために使える貴重な期間でした。留学は自分の将来について考えられて、たくさんの新しい考え方に触れられて、自分の将来に必ず影響を及ぼすものだと再確認しました。たった1か月でしたが、今まで生きている中で1番濃い1か月になりました。ありがとうございました。

2023年度 アルバータ大学夏季研修プログラム 報告書 (松井さん)

エドモントンオイラーズの試合。プレシーズンでも多くの観客で賑わっていました。アイスホッケーは思っていた以上にカナダの象徴するスポーツということがわかりました。

2023年度 アルバータ大学夏季研修プログラム 報告書 (松井さん)

アルバータ大学の近くを流れるノースサスカチュワン川。向かって左に見えるビル群がダウンタウンと呼ばれる地域で、オイラーズの試合を見るロジャーズプレイスや博物館などもあります。

2023年度 アルバータ大学夏季研修プログラム 報告書 (松井さん)

アルバータ大学研究農場前での集合写真。1番左の方が久富聡子さん。