トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム(ウガンダ)活動報告 1月
掲載日:2019.02.06
獣医学群獣医学類5年 梅原悠季
ウガンダでの生活も3カ月半が経過しました。ウガンダに来て初めての乾季に突入し、雨季とは質の違う日差しの強さ、暑さに体を慣れさせるのに苦労している今日この頃です。ウガンダは赤道直下の国で暑いイメージが強いかと思いますが、実は標高が比較的高く特に雨季は朝晩かなり冷え込みます。乾季の暑さは少々慣れませんが、雨季は日本の夏よりもずっと過ごしやすいウガンダです。
今回は1.牛乳バリューチェーン調査 2.草の根プロジェクトがどのように評価されていくか 3.ウガンダで迎えた誕生日 について紹介しています。
1.牛乳バリューチェーン調査
年明けからNARO(ウガンダ国の農業研究所)に所属する獣医師が短期間プロジェクトに参加し、牛乳バリューチェーンの調査がスタートしました。農家さんのもとで生産された牛乳が集乳所(各農家さんで絞られた牛乳が集められる所)に運ばれ、さらに工場で加工され市場に出回るまでの一連の流れのどの過程で牛乳に価値が付加されていくか、これを牛乳バリューチェーンと言います。プロジェクトでは、牛乳が農家さんから集乳所で集められるまでの過程の、牛乳衛生についてのバリューチェーン調査を行っています。(下図黄色枠)
調査では、バルクミルク(全頭又は全農家のミルクが混ざった状態のもの)、ミルク缶又はバルククーラー(ミルクが貯蔵されるクーラー)を洗浄する前後のスワブ(表面を拭きとったもの)、洗浄に利用する水の計4種類のサンプルをそれぞれ農家さんと集乳所から回収し、細菌検査を行います。細菌検査は2種類実施し、血液寒天培地と3Mペトリフィルム(紙に培地成分が含まれている。サンプルをペトリフィルムに垂らし、別のフィルムで挟むだけという簡単に操作できるもの)に4サンプルを播き、血液寒天培地は24時間、3Mペトリは48時間インキュベートし、コロニーの生え具合によって衛生レベルをスコアリングします。
調査が始まって最も大変に感じることは、サンプリング作業です。作業自体はシンプルで難しいものではないのですが、30件全ての農家さんと4件の集乳所の搾乳時間やクーラーを洗浄する時間を目掛けて現場に向かうこと、現場でサンプリングさせてほしい旨を丁寧に伝え了承を得ることがまず最も大変かつ根気のいる作業であると感じています。さらに、日本のように搾乳時間やクーラーの洗浄時間がきっちり決まっていればスムーズに作業が進められますが、ウガンダでは事前に農家さんや集乳所の方から聞いていた時間と異なる時間に作業が終わってしまっていたり、搾乳時間も1日1回早朝4時のみという場合もあるため、予定通りサンプリングが進められることの方が少ないのです。この国では綿密な計画を立てる能力よりも、現場で臨機応変に対応し作業を進められる能力の方が重要であると感じています。
2.草の根プロジェクトがどのように評価されていくか
私の留学受け入れ先であるプロジェクトは、正式名称をJICA草の根パートナー型技術協力事業「ムバララ県安全な牛乳生産支援プロジェクト」と言います。草の根パートナー型というのは、JICA北海道(日本各地のJICA事務所)が個人事業主である酪農学園大学(大学機関やNGOなど)に事業を委託し、JICA北海道は資金面のサポートを行うというシステムです。プロジェクトは3年間の契約で行われており、今年9月の終了に向けて残り約半年、プロジェクトの成果を評価するための調査活動(搾乳衛生・栄養繁殖管理・ダニ疾病削減の3項目の目標に対する改善がどの程度されたかの疫学調査)が今後進められる計画です。また、プロジェクト終了に向けてJICA北海道からプロジェクト担当の方々が視察に来られ、プロジェクトの進み具合を確認すると共にどのように成果を評価するかという点について現地カウンターパートも交え話し合いました。
視察期間中に最も活発に意見交換されたテーマは“Sustainability”についてです。プロジェクト終了後も継続して酪農技術が向上していける仕組み作りができているか、各組織のフォーカルパーソンとの協力体制が築けているか、現地カウンターパート達自身はSustainabilityについてどのように考えているかなどに関して話し合われました。話し合いには日本人の他にもプロジェクト現地普及員(県獣医師・家畜飼養アドバイザー)、農家オーナー、SNVの現地普及員(オランダの組織。ムバララで酪農技術向上を目的としたハード面のサポートを行っている、規模の大きいプロジェクト)などが参加し、SNVとJICA草の根でのプロジェクトの進め方、考え方をそれぞれシェアしたり、農家さんが現在最も問題視していること(ダニ対策が追い付かない、乳価が安いなど)、現地普及員が日本側に求めること(酪農学園大側にもっとプロジェクトの存在を知ってほしい、技術や知識を現地人たちにもっと広める機会がほしい)などに関する意見が出されました。
*写真(上):SNV主催のワークショップでJICA草の根プロジェクトチームメンバーが農家さんに向けプレゼン。
搾乳衛生やダニ対策、栄養繁殖管理についてレクチャーした。
*写真(下):農家さんを訪問し、プロジェクトによって何か良い変化があったかなどインタビューした。
今回の視察で個人的に良かったと感じたことは、普段あまり一堂に会することのないカウンターパート達がほぼ全員集まり、それぞれを繋げるきっかけになったこと、同時に意見を交換する場を設けることが出来たということです。プロジェクトも2年が過ぎ、普及活動を様々なカウンターパート達と共に行ってきたことでプロジェクトに関わってきてくれた現地の仲間は数十人にまで増えています。これまでは私達とそれぞれカウンターパートが1対1でコンタクトをとり共に活動してきましたが、これからはこのカウンターパート達の横の繋がりを強くしていくことが重要であると考えさせられました。また、Sustainabilityについて現地の人々の考えを聞くことができたのも、今後の普及活動の進め方を考える上で非常に貴重な機会であったと感じています。
3.ウガンダで迎えた誕生日
1月は私の24歳の誕生日でした。誕生日当日は在ウガンダ日本大使館主催の賀詞交換会に参加するためカンパラに上がっており、日本らしい誕生日を迎えることとなりました。パーティーではウガンダでビジネスや仕事、留学をしている様々な日本人の方々とお話しをし、留学への想いを再確認、さらに活動を加速させるためのモチベーションを得られたとても有意義な時間となりました。さらに、この日から新しくウガンダで始めた活動があります。サックスの先生です。実は中学・高校と吹奏楽部で長年サックスを吹いていた私は、大学でもたまにライブに出るなどかれこれ10年近く楽器を続けており、ウガンダでも音楽を続ける機会を伺っていました。幸運にも機会が得られ、ムバララの音楽教室で現地の人に楽器を教えることができるようになりました。大好きな音楽でのウガンダの人々との交流からどのようなものが生まれるかを想像して、新たな出会いを楽しみにレッスンのメニューを考えています。