2022年度 タイ・カセサート大学単位互換プログラム 9月報告書(鎌塚さん)

掲載日:2022.10.18

カセサート大学交換留学 月末報告 9月

獣医学群獣医学類5年 鎌塚 龍生(Ryusei Kamazuka)

この留学はASEAN統合に向けた政府主導の学部生向け学生交流プログラム(AIMS)をもとに獣医系部門として東京大学、北海道大学、酪農学園大学の3大学が参加し、タイのカセサート大学で単位を互換しながら学べるというものです。今年度は厳正なる審査の結果(ココ重要!)、男子3名、女子1名が選抜され、カセサート大学に留学へ来ています。

まず、9月17日に現地の飛行機を降りて入国審査を受けましたが、並んだ列があまりにも遅かったため空港で換金できず、早くも不安になりました。寮での生活が始まると水に気を使わなければならず少し疲れました。留学における事前学習会では、とある教授から耳にタコができるほど下痢に気をつけるように言われていたため、歯磨きやうがいもペットボトルの水を使用しました。学外のマーケットでも屋台料理のフルーツや食器、氷などでも容易にお腹の調子を崩すと聞いていましたが、カセサート大学の学生に観光名所に連れて行ってもらった際にタイ2日目にして屋台の生フルーツや氷を食べることとなり、その後はいつ下痢が来るか日々怯えていました。また、2日目は持って来たキャッシュカードが使用できず、カセサート大学の学生を困惑させてしまいました。よく調べてからキャッシュカードを作るべきでした。反省しています。持ち込んだ現金も少なかったので、一時的に平織くんにキャッシングしてもらい、オンラインで口座間送金するという方法で対処しています。僕は彼無しではタイで生きられません(笑)。

9月19日からの第1週はAquaticでした。タイは国土に対して海岸地域が狭いため、魚の養殖が盛んに行われています。この理由からタイでは魚病についても深く学びます。授業ではタイでの漁業の歴史や病原体との闘い、水質の検査項目、エビの養殖について学びました。実際に農家に出向く実習では観賞用金魚農家とエビ農家に行きました。驚くべきことに金魚農家へ出向く実習では、顕微鏡を持っていきその場で体表やエラに寄生している寄生虫を観察しました。日本の教科書は対応外です。また、学生が能動的に動いて水質検査をしており、こういった姿勢は見習いたいと思いました。さらに、タイでも耐性菌の出現や農家とのコミュニケーションなど日本でも共通して見られる問題があり、ここで獣医としての資質や価値が問われると感じました。Aquaticを通して日本に目を向けると、これだけ水産資源に恵まれ、養殖の技術も高く、食文化にも魚は欠かせないものであるにも関わらず、マネージメントを含めた獣医療はあまり浸透していないように感じます。魚を取り巻く環境や種特異的な形質など身につける知識がまだまだあると感じました。また、一般市民も取り込み危機感を持って対処していかなければいけない問題だと感じました。

9月26日からの第2週はExoticでした。動物病院のエキゾチック部門の診療の他に、鳥類センターや象の病院などでも学びました。動物病院では日々様々な動物が診療に訪れます。カセサート大学では千差万別ある種の全てを学部生の時点で学びます。そのためエキゾチックであろうと卒業と同時に診療に参加できるようです。実際に鳥類センターの先生は卒業後すぐに鳥類センターで働き始めており、すぐに一人で任されているようです。一方、私は病院内で質問されたtickとmiteの違いさえ即座に答えることができないだけでなく、鳥類の解剖もまともに分からず、もどかしさを感じました。エキゾチックでは個人経営の動物園に往診にも行きました。駆虫をメインに行いました。エキゾチックだけではないですが、診療を見ていると感染症など病原体に対する意識は低いように思えます。もちろん費用面もあると思いますが、獣医師が一番のベクターになりうる状況だったので、少し驚きました。帰国の際は十分注意し、持ち込みに気をつけたいと思いました。

タイの国民性やカセサート大学について感じたこともあります。お互いを知らなくてもよく話す人が多く、日本と違い心的距離が近い気がします。カセサート大学の学生同士でもよく話し合っていて仲の良いイメージでした。私たちの周りの学生もみんな優しく、どんなささいなことにも手を差し伸べ、積極的に話しに来てくれます。それゆえに余計、自分の英語力の無さに涙する日々です。カセサート大学の学生は英語力だけでなく知識も豊富です。もちろんそれぞれの国の持つ背景は違いますが、学ぶ動物種の多さから化学的知識まで広範囲にわたり深く勉強していると感じました。またカセサート大学は実習に重きを置いていて、生体を通して自分で手を動かす実践的な学びに長けています。臨床獣医師志望の多い酪農学園大学にとって有益な点がいくつもあると感じました。またEAEVEは酪農学園大学の目指すべき強みを消してしまうのではないかとも危惧しています。

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2日目の歓迎式典。真面目な様子が伺えますね。

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水質検査の様子。エビの養殖には水質がカギです。

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エビの養殖池の様子。プロペラを用いて酸素を水中に送り込みます。

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プレゼンの様子。カセサート大学生は毎週プレゼンに追われています。

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金魚農家の養殖生簀。寄生虫の宝庫でした(笑)

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ライギョ農家から剖検依頼を受け、解剖している様子。

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引率のとある教授も寄生虫探しに必死!

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鳥類の採血をしているところ。もちろんs.cやi.mもしています。

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ミンナ、マブダチ。

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コンビニの入り口に野犬。Rabies待ったなし!

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毎日どこかしらの屋台でご飯を食べます。学生街は毎日お祭りみたいです。