海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)5月 植野耕史さん

掲載日:2022.06.07

海外農業研修

循環農学類(2019年度卒) 植野耕史(Yasufumi Ueno)

カリフォルニアでは本格的な夏に入り、気候もさらに乾燥してきたため、山火事が心配な時期です。聞いた話によるとここ数年は山火事の規模が拡大しており、昨年は私が住んでいる町の隣まで火の手が迫ってきたようです。穀物や家畜、ナッツ類の生産農家は非常に危機管理が重要になってくると思いました。またこの山火事の頻発は、カリフォルニアをはじめとするアメリカ西部に農業生産の多くを依存しているアメリカの農業体系の維持の難しさを痛感させられる出来事だと感じました。
今月は休日に私と同じカリフォルニアで研修に励んでいる同期研修生の農場に遊びに行き、BBQとファームツアーをしてもらいました。久しぶりの再会で話も弾み、非常に充実した休日になりました。農場は広大な面積の中に野菜をはじめ、花、果物、家畜と農業生産を全て網羅しているような生産体系であり、さらにそれらの加工、ファーマーズマーケットの出店やデリバリーなど農業の6次産業化にも積極的に取り組んでいました。また、オーガニックでの生産をおこなっていて、花に関してもオーガニックで生産していることに非常に驚きました。
近年の人々の健康や環境への意識の高まりから、有機生産や無農薬生産などが注目され、アメリカではスーパーでも多くのオーガニック製品を見ることができますが、この要因の一つとして、雨が少なく湿度が低いカリフォルニアだからこそ他地域よりは容易にそれらの生産が実現でき、収益性も高いという側面があると思います。
日本においても無農薬、有機での農業生産は、日本農業の特徴でもある正確な管理や洗練された栽培法と掛け合わせることによって、アメリカと同様かそれ以上に生産物の高付加価値化、土壌への負担減、生態系への影響減などを実現できる可能性がある一方、雨が多く、湿度が高い日本でその取り組みを実現させることは収益性の観点から見て容易では無いと思います。私がもし農家だったら、収穫直前の花や野菜が害虫やウイルスにやられてしまったらと考えると、これらの生産方法の導入には二の足を踏んでしまうと思います。
農家も個人で戦っていかなければならない時代に、他者と差別化を図る要素の一つとしてアメリカでは一般的な無農薬、有機農業を選択することがあると思いますが、日本でのオーガニック需要の掘り起こしや地域性、気象等、様々な条件を考慮した上での選択が必要になってくると感じました。

海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)5月 植野耕史さん

花のオーガニック栽培