海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)1月 矢方祐維さん
掲載日:2022.02.10
海外農業研修報告書 2022年1月
循環農学類(2020卒) 矢方祐維(Yui Yakata)
2022年が始まり、ついに、この研修も残すところ一年を切りました。今月は農場でPorcine epidemic diarrhea(以下PED:豚流行性下痢)ウイルスが発生し通常とは異なった作業となりました。また、私自身も病気にかかりアメリカに来て最も大変な月となりました。
1月1日の早朝、ボスから農場に入らないように伝えられました。ある一つの分娩舎でPEDウイルスが発生しておりその状況を確認するのと同時に蔓延を防ぐためのものでした。早急に、発生した部屋の隔離や農場全ての洗浄を行いましたが、対策した甲斐もむなしく、農場にいるほぼ全ての豚がウイルスに感染してしまいました。母豚や産後10日ほど経過した子豚たちは数日苦しんだだけで済みましたが、産後間もない子豚たちは脱水症状などで衰弱し命を落としてしまうケースが多く見られました。多い日で1日当たり400匹の子豚が衰弱死していきました。今月だけで約10,000匹の子豚が衰弱死してしまいました。今月の私の主な仕事はその衰弱した子豚を回収することでした。中にはまだ息がある子豚もいました。しかし彼らはもう長く生きることができないため、苦しみを軽減するためにガス室に運びました。ですが、ガス室にも限りがあるため、入りきれなかった子豚はできるだけ苦しまない方法で屠畜しました。
その他、全ての豚にPEDの抗体を持たせるため、感染した子豚からウイルスを取り出し全ての母豚に感染させる作業なども行いました。
そんな中今度は人に対してCOVID-19と思われる病気が農場で流行してしまいました。私も罹患してしまいました。10日間ほど病気で苦しみました。話で聞いていたCOVID-19の症状に酷似していたのでおそらくCOVID-19だったのではないかと思われます。
この2つの問題が同時に起こり今月は心身ともに大変な1か月でした。発生から約1か月経過した今も、毎日洗浄を繰り返し、少しずつウイルスの影響範囲は狭まってきていますが、完全に元通りというわけではありません。新しく生まれてくる子豚たちが、ウイルスに感染しないように厳戒態勢を敷きながら作業を行っております。具体的にはチームを2つに分け、分娩を担当するチームは衣服や道具などを完全に隔離された状態で作業を行っております。今回このようなことが起き、どのように対応したらよいのか学ぶことができました。それと同時に、生き物相手の仕事の大変さ、難しさも学びました。早く元の作業形態に戻れることを願いつつも私は与えられた役割を忠実にこなしていこうと思います。