トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム(ウガンダ)活動報告 2月
掲載日:2019.03.08
獣医学群獣医学類5年 梅原悠季
ウガンダでの生活も4カ月半が経過しました。12月~2月の短い乾季が突然終わり、最近は長時間の雨や突然のスコールで停電することもしばしばです。停電した夜の過ごし方と言えば、もう寝るしかないのですが、スコールが来れば停電が来ることが予想できるため帰宅後すぐにシャワーを浴び、電気のある内にスマホの充電をするなど停電に備える習慣が身に付きました。電気のない生活も都市に行けば不便を感じてしまいますが、田舎ではほとんど何の支障もない(電化製品がまずないので)のだなということを感じています。今回は、1.酪農家女性グループワークショップ 2.東沿岸熱(ECF)の調査 3.ウガンダの市販牛乳は生で飲めるのかについて紹介しています。
1.酪農家女性グループワークショップ
今回2回目の開催となる酪農家女性グループのワークショップは、ヨーグルト加工を行う女性グループに声をかけ行いました。酪農家女性グループワークショップとは、本プロジェクト(ムバララ県安全な牛乳生産支援プロジェクト)における行動目標の一つとして盛り込まれており、酪農家女性達の地位向上や収入向上を目指して行っています。女性達は酪農業の全般、家事や他家畜の世話、ガーデニングなどほとんどの仕事をこなし、酪農ビジネスにおいて特に重要な役割を担っている中、ほとんどの収入を男性(夫)が握ってしまっているという問題が背景として存在します。今回ワークショップを開催したヨーグルト加工を行う女性グループは、SNV(オランダの国際開発組織)が指揮をとり同じく女性の収入や地位向上を目指して作成されたグループです。(SNVはムバララ県内でかなり規模の大きい酪農関係の支援事業を行っており、このヨーグルト事業もそのひとつ。)SNVが関与する集乳所の一角に事務所を構え、集乳所の牛乳を用いてヨーグルトを生産する技術指導を受け、今では女性達自身で発注に応じて生産、輸送し、収入を得るところまで自立しています。
ワークショップの内容は前回同様、フォーカスグループディスカッション方式で12項目前後の質問事項(チェックリスト)について議論がなされるよう、ファシリテーターと書記を置いて行いました。前回のワークショップと共通して感じたことは、家族の収入の配分についての議論になった際、どの女性も男性(夫)に対して不満を抱いているケースが多いということです。先に背景でもお話しした通り、女性が家事や家畜の仕事全般を行う一方で男性は集乳を得る過程のみ自分で行い、収入をほとんど全て握ってしまうという話を強く話していました。そんな中、このヨーグルトプロジェクトで得た収入はグループの女性達の収入になっており今後も拡大していくべき事業であるということを強く感じます。さらに、この収入を彼女ら自身がどのように利用するのか、という点も気になるところかと思います。この議論に関しては様々な話があり、子供の養育費や家材のため、より家畜の知識を得るため、自分の美容のためなど個々から異なった意見を聞くことが出来ました。
開始予定時間には2人しか集まっていなかったが、1時間ほどかけて続々と女性達が集まり
最終的に10人でディスカッションを行うことができた。
このワークショップの目的は、決して女性達に愚痴をこぼしあう場を提供することではありません。議論を交わしてもらうことでどのような問題が存在するか共有してもらうこと、女性同士のコミュニティを形成するきっかけを作ること、私たちが彼女たちの問題を理解し、どのようにお手伝いができるか考えることなどを目的として行っています。今後このワークショップを彼女らや彼女ら家族に少しでもプラスになるようフィードバックしていく方法を考え実践していくことも、彼女たちの貴重な意見を聞くことのできた実施者の役割です。
2.東沿岸熱(ECF)調査
本プロジェクトは3年間の契約で、初年度にベースライン調査、次年度に普及活動という流れで進められ、最終年度である現在は普及活動前後でどのような改善がみられたかについて調査を行っています。2月は特に、ダニ媒介性疾病である東沿岸熱(ECF:East coast fever)の罹患率を調べるため各農家さんから血液サンプルを回収するという作業を行っていました。今回は仔牛のみからの採材でしたが、この作業がとてつもなく体力と根気のいる作業で、フィールドワークの大変さを実感する経験となりました。
各農家の仔牛全頭から採血を行う。農家さんによっては100頭近く飼育しているところもあり、さらに放牧のため人に慣れておらず集めるのも触れるのも容易ではない。農家さんの協力と素早く採血する技術が必要。仔牛を大量にクラッシュに詰め込むため、一頭が暴れだすとドミノ倒しになり牛が牛に踏まれけがをする危険もあるため、危険と隣り合わせの作業となる。(私も牛に蹴られ痣がいくつか体に残ったり、牛も人間も必死の作業)
(左)牛についたダニを取っている。殺ダニ剤に対する抵抗性などを検査する。
(右)先月行った牛乳バリューチェーンの結果を農家さんに伝える。プロジェクトの調査の採材する目的も大きいが、協力してもらっていることや農家さんの現状を知ってもらうことを鑑みて良い結果も悪い結果もしっかり伝え、どのように改善していけるかも合わせて伝えることが大切である。
3.ウガンダの市販牛乳は生で飲めるのか
こちらでよく受ける質問として、スーパーで売っている牛乳は生で飲めるのか?というものがあります。先に結論をお話しすると、ロングライフミルクという牛乳であれば生で飲んでも問題ありません。私も毎日500ml消費していますが、一度もお腹を壊したことはありません。といっても説得力がないかと思ったので、血液寒天培地で牛乳を培養してみました。
上記の通り、コロニーは一つも見られず非常に衛生的な牛乳であることが分かります。(消費期限の1カ月切れた牛乳で試したところかなり細菌が見られました。消費期限は守りましょう。)というのも、ロングライフミルクは、各乳製品会社工場でUHT(超高温殺菌)法で処理され、密閉容器に入れて出荷されるため消費期限が3ヶ月(未開封)と長く安心して飲むことが出来るのです。日本では消費期限1週間前後の紙パックミルクが主流かと思いますが、ウガンダでは物流がまだまだ開発途中のため新鮮な食材を遠方に輸送する技術がなく、ロングライフミルクが主流に出回っています。ただ、製造過程で水の含有率が高くなってしまったり味が落ちてしまったりするため、温度低めの冷蔵庫で保存すると凍ってしまう、生で飲めるがおいしくはないという状況もあります。私はアフリカンティーが大好きなので、よく集乳所から直接牛乳を購入し、煮沸して飲んでいます。
ウガンダのこのような状況をみながら、日本の物流の発達、味を追求した牛乳のクオリティの高さに改めて感動を覚える今日この頃です。
獣医学群獣医学類5年 梅原悠季
ウガンダでの生活も4カ月半が経過しました。12月~2月の短い乾季が突然終わり、最近は長時間の雨や突然のスコールで停電することもしばしばです。停電した夜の過ごし方と言えば、もう寝るしかないのですが、スコールが来れば停電が来ることが予想できるため帰宅後すぐにシャワーを浴び、電気のある内にスマホの充電をするなど停電に備える習慣が身に付きました。電気のない生活も都市に行けば不便を感じてしまいますが、田舎ではほとんど何の支障もない(電化製品がまずないので)のだなということを感じています。今回は、1.酪農家女性グループワークショップ 2.東沿岸熱(ECF)の調査 3.ウガンダの市販牛乳は生で飲めるのかについて紹介しています。
1.酪農家女性グループワークショップ
今回2回目の開催となる酪農家女性グループのワークショップは、ヨーグルト加工を行う女性グループに声をかけ行いました。酪農家女性グループワークショップとは、本プロジェクト(ムバララ県安全な牛乳生産支援プロジェクト)における行動目標の一つとして盛り込まれており、酪農家女性達の地位向上や収入向上を目指して行っています。女性達は酪農業の全般、家事や他家畜の世話、ガーデニングなどほとんどの仕事をこなし、酪農ビジネスにおいて特に重要な役割を担っている中、ほとんどの収入を男性(夫)が握ってしまっているという問題が背景として存在します。今回ワークショップを開催したヨーグルト加工を行う女性グループは、SNV(オランダの国際開発組織)が指揮をとり同じく女性の収入や地位向上を目指して作成されたグループです。(SNVはムバララ県内でかなり規模の大きい酪農関係の支援事業を行っており、このヨーグルト事業もそのひとつ。)SNVが関与する集乳所の一角に事務所を構え、集乳所の牛乳を用いてヨーグルトを生産する技術指導を受け、今では女性達自身で発注に応じて生産、輸送し、収入を得るところまで自立しています。
女性達が作っているヨーグルト。近隣地域や首都カンパラからも発注を受け生産、出荷している。規模が小さいため一度に生産できる量は限られており輸送手段も公共バスで個人が運ぶなどまだまだ需要に対し改善できる点が多く見られた。何より、ヨーグルトに価値を付加したいと様々な味を開発中であるなどモチベーションの高さが伺えたのが支援の持続可能性として非常に好印象を受けた。
ワークショップの内容は前回同様、フォーカスグループディスカッション方式で12項目前後の質問事項(チェックリスト)について議論がなされるよう、ファシリテーターと書記を置いて行いました。前回のワークショップと共通して感じたことは、家族の収入の配分についての議論になった際、どの女性も男性(夫)に対して不満を抱いているケースが多いということです。先に背景でもお話しした通り、女性が家事や家畜の仕事全般を行う一方で男性は集乳を得る過程のみ自分で行い、収入をほとんど全て握ってしまうという話を強く話していました。そんな中、このヨーグルトプロジェクトで得た収入はグループの女性達の収入になっており今後も拡大していくべき事業であるということを強く感じます。さらに、この収入を彼女ら自身がどのように利用するのか、という点も気になるところかと思います。この議論に関しては様々な話があり、子供の養育費や家材のため、より家畜の知識を得るため、自分の美容のためなど個々から異なった意見を聞くことが出来ました。
このワークショップの目的は、決して女性達に愚痴をこぼしあう場を提供することではありません。議論を交わしてもらうことでどのような問題が存在するか共有してもらうこと、女性同士のコミュニティを形成するきっかけを作ること、私たちが彼女たちの問題を理解し、どのようにお手伝いができるか考えることなどを目的として行っています。今後このワークショップを彼女らや彼女ら家族に少しでもプラスになるようフィードバックしていく方法を考え実践していくことも、彼女たちの貴重な意見を聞くことのできた実施者の役割です。
2.東沿岸熱(ECF)調査
本プロジェクトは3年間の契約で、初年度にベースライン調査、次年度に普及活動という流れで進められ、最終年度である現在は普及活動前後でどのような改善がみられたかについて調査を行っています。2月は特に、ダニ媒介性疾病である東沿岸熱(ECF:East coast fever)の罹患率を調べるため各農家さんから血液サンプルを回収するという作業を行っていました。今回は仔牛のみからの採材でしたが、この作業がとてつもなく体力と根気のいる作業で、フィールドワークの大変さを実感する経験となりました。
各農家の仔牛全頭から採血を行う。農家さんによっては100頭近く飼育しているところもあり、さらに放牧のため人に慣れておらず集めるのも触れるのも容易ではない。農家さんの協力と素早く採血する技術が必要。仔牛を大量にクラッシュに詰め込むため、一頭が暴れだすとドミノ倒しになり牛が牛に踏まれけがをする危険もあるため、危険と隣り合わせの作業となる。(私も牛に蹴られ痣がいくつか体に残ったり、牛も人間も必死の作業)
(左)牛についたダニを取っている。殺ダニ剤に対する抵抗性などを検査する。
(右)先月行った牛乳バリューチェーンの結果を農家さんに伝える。
プロジェクトの調査の採材する目的も大きいが、協力してもらっていることや農家さんの現状を知ってもらうことを鑑みて良い結果も悪い結果もしっかり伝え、どのように改善していけるかも合わせて伝えることが大切である。
3.ウガンダの市販牛乳は生で飲めるのか
こちらでよく受ける質問として、スーパーで売っている牛乳は生で飲めるのか?というものがあります。先に結論をお話しすると、ロングライフミルクという牛乳であれば生で飲んでも問題ありません。私も毎日500ml消費していますが、一度もお腹を壊したことはありません。といっても説得力がないかと思ったので、血液寒天培地で牛乳を培養してみました。
上記の通り、コロニーは一つも見られず非常に衛生的な牛乳であることが分かります。(消費期限の1カ月切れた牛乳で試したところかなり細菌が見られました。消費期限は守りましょう。)というのも、ロングライフミルクは、各乳製品会社工場でUHT(超高温殺菌)法で処理され、密閉容器に入れて出荷されるため消費期限が3ヶ月(未開封)と長く安心して飲むことが出来るのです。日本では消費期限1週間前後の紙パックミルクが主流かと思いますが、ウガンダでは物流がまだまだ開発途中のため新鮮な食材を遠方に輸送する技術がなく、ロングライフミルクが主流に出回っています。ただ、製造過程で水の含有率が高くなってしまったり味が落ちてしまったりするため、温度低めの冷蔵庫で保存すると凍ってしまう、生で飲めるがおいしくはないという状況もあります。私はアフリカンティーが大好きなので、よく集乳所から直接牛乳を購入し、煮沸して飲んでいます。
ウガンダのこのような状況をみながら、日本の物流の発達、味を追求した牛乳のクオリティの高さに改めて感動を覚える今日この頃です。