2018年度イタリア研修報告 マルケ編 その1

掲載日:2019.03.01

大学院 酪農学研究科 博士課程1年 髙橋 宗一郎

イタリアには20の州があるが、マルケ州を知っている人はどれだけいるだろう。日本人にとって馴染みのある街や名物が豊富にあるわけではなく、ついつい他の地域が注目されがちなのだが、私はマルケ州が大好きだ。もちろん、前年に3か月間滞在していた場所ということで思い出深いことも理由のひとつなのだが。マルケ州はその土地の99%が丘陵・山岳地帯で平野部がほとんどない。アドリア海に面した海岸線はどこもとにかく美しく、オンシーズンは観光客でいっぱいだ。州都のアンコーナは、紀元前から港町として栄えていて、現在も大型の旅客船が停泊する。食に関して言えば、魚介類のスープ(Brodetto di pecse)はマルケ州で食べるものが一番おいしいと言われていたり、卵入りの黄色い平麺タリアテッレが有名だったりと、魅力的な地元料理は多い。ワインは、白ならばヴェルディッキオ種主体でつくられたVerdicchio dei Castello di JesiやVerdicchio di Matelica、赤であればモンテプルチャーノ種主体のRosso Coneroが有名だ。

私は前年と同様に、マルケ州アンコーナの郊外、カメラーノという小さい村に滞在していたのだが、滞在中にこのRosso Coneroのお祭りが開催された。そもそもRosso(ロッソ)は赤、Conero(コーネロ)はコーネロ山一帯の地域を指す。つまり、Conero地域でつくられた赤ワインを意味し、モンテプルチャーノ種を85%以上使用している赤ワインに名づけることが出来る。さらに、モンテプルチャーノ種85%以上、サンジョベーゼ種15%までのもので、2年以上熟成されたものはConeroと名乗ることが出来る(品種の他にアルコール度数の決まりもある)。Rosso ConeroとConeroはイタリアワインの格付けにおいてそれぞれDOC、DOCGに登録されている。

9月7日から9日にかけて盛大なお祭りが開かれ、たくさんの生産者がブースを開いた。それに合わせて地元のレストランが屋台を出し、物販などもあって、カメラーノは日常では考えられないほどの人でごった返していた。初日は予定があったので行かず、中日の8日の夜に初めて訪れたが、土曜日だったこともあり想像を超えた人の数に圧倒された。普段は人がまばらにしかいない広場に、人がひしめき合っており、どこに何があるかすら分からない。あまりの人の多さに、この日は試飲を諦めた。翌日、日曜日の夕方に再び行くと、混雑はだいぶ緩和され、ようやく試飲することが出来た。受付でグラス付きのチケットセットを買い、各ワイナリーのブースで、チケットを使用してワインを飲む仕組みになっていた。ちなみに、ノーマルなもの(base:バーゼ)と熟成されたもの(riserva:リゼルヴァ)によってチケットの種類が異なる。後から追加でチケットを購入できるのだが、良いグレードのワインを飲むチケットは当然割高だ。

比較的混雑していなかったとは言っても、相変わらず賑わいを見せている中で、生産者に長時間質問し続けることは出来なかったが、「日本でワインを研究していて、昨年ここに住んでいた」と言うと、皆とても喜んで親切にしてくれた。中には、初めてのヴィンテージが3年前くらいの、かなり新しいワイナリーも参加していた。一方で、昨年よりも出展ワイナリー数が減ったという話も聞いた。後日友人たちは「このお祭りの、コマーシャルとしての魅力が薄まってきているのかもしれない」ということや「在庫を抱えたままで新しい仕込みの時期を迎えたくないから、消費してしまいたい狙いがあるんだよ」という話をしていた。この祭りには「ワインを楽しむ」という目的よりも、「地域のお祭り」というニュアンスが強いのかもしれない。だが、彼らが地元のワインが好きであるということも、よく伝わってきた。地元愛が強いイタリア人らしいと思う。前年の留学の際、カメラーノのアパートに到着したとき、オーナー夫妻が用意してくれていたワインがあった。それがRosso Coneroだった。当時はまだタンニンが濃いワインに慣れておらず、Rosso Coneroのパワフルさについていけなかったが、一年が経ち、違いを比較できるくらいにはなったのだと、その時感じた。そういった意味でRosso Coneroは、自分の成長に伴って違う面を見せてくれるワインなのかもしれない。

“Rosso Coneroの地 カメラーノ”
と書かれた垂れ幕、
人で賑わう土曜日の夜

比較的落ち着いた日曜日の夕方

試飲ブースの様子

大学院 酪農学研究科 博士課程1年 髙橋 宗一郎

イタリアには20の州があるが、マルケ州を知っている人はどれだけいるだろう。日本人にとって馴染みのある街や名物が豊富にあるわけではなく、ついつい他の地域が注目されがちなのだが、私はマルケ州が大好きだ。もちろん、前年に3か月間滞在していた場所ということで思い出深いことも理由のひとつなのだが。マルケ州はその土地の99%が丘陵・山岳地帯で平野部がほとんどない。アドリア海に面した海岸線はどこもとにかく美しく、オンシーズンは観光客でいっぱいだ。州都のアンコーナは、紀元前から港町として栄えていて、現在も大型の旅客船が停泊する。食に関して言えば、魚介類のスープ(Brodetto di pecse)はマルケ州で食べるものが一番おいしいと言われていたり、卵入りの黄色い平麺タリアテッレが有名だったりと、魅力的な地元料理は多い。ワインは、白ならばヴェルディッキオ種主体でつくられたVerdicchio dei Castello di JesiやVerdicchio di Matelica、赤であればモンテプルチャーノ種主体のRosso Coneroが有名だ。

私は前年と同様に、マルケ州アンコーナの郊外、カメラーノという小さい村に滞在していたのだが、滞在中にこのRosso Coneroのお祭りが開催された。そもそもRosso(ロッソ)は赤、Conero(コーネロ)はコーネロ山一帯の地域を指す。つまり、Conero地域でつくられた赤ワインを意味し、モンテプルチャーノ種を85%以上使用している赤ワインに名づけることが出来る。さらに、モンテプルチャーノ種85%以上、サンジョベーゼ種15%までのもので、2年以上熟成されたものはConeroと名乗ることが出来る(品種の他にアルコール度数の決まりもある)。Rosso ConeroとConeroはイタリアワインの格付けにおいてそれぞれDOC、DOCGに登録されている。

9月7日から9日にかけて盛大なお祭りが開かれ、たくさんの生産者がブースを開いた。それに合わせて地元のレストランが屋台を出し、物販などもあって、カメラーノは日常では考えられないほどの人でごった返していた。初日は予定があったので行かず、中日の8日の夜に初めて訪れたが、土曜日だったこともあり想像を超えた人の数に圧倒された。普段は人がまばらにしかいない広場に、人がひしめき合っており、どこに何があるかすら分からない。あまりの人の多さに、この日は試飲を諦めた。翌日、日曜日の夕方に再び行くと、混雑はだいぶ緩和され、ようやく試飲することが出来た。受付でグラス付きのチケットセットを買い、各ワイナリーのブースで、チケットを使用してワインを飲む仕組みになっていた。ちなみに、ノーマルなもの(base:バーゼ)と熟成されたもの(riserva:リゼルヴァ)によってチケットの種類が異なる。後から追加でチケットを購入できるのだが、良いグレードのワインを飲むチケットは当然割高だ。

比較的混雑していなかったとは言っても、相変わらず賑わいを見せている中で、生産者に長時間質問し続けることは出来なかったが、「日本でワインを研究していて、昨年ここに住んでいた」と言うと、皆とても喜んで親切にしてくれた。中には、初めてのヴィンテージが3年前くらいの、かなり新しいワイナリーも参加していた。一方で、昨年よりも出展ワイナリー数が減ったという話も聞いた。後日友人たちは「このお祭りの、コマーシャルとしての魅力が薄まってきているのかもしれない」ということや「在庫を抱えたままで新しい仕込みの時期を迎えたくないから、消費してしまいたい狙いがあるんだよ」という話をしていた。この祭りには「ワインを楽しむ」という目的よりも、「地域のお祭り」というニュアンスが強いのかもしれない。だが、彼らが地元のワインが好きであるということも、よく伝わってきた。地元愛が強いイタリア人らしいと思う。前年の留学の際、カメラーノのアパートに到着したとき、オーナー夫妻が用意してくれていたワインがあった。それがRosso Coneroだった。当時はまだタンニンが濃いワインに慣れておらず、Rosso Coneroのパワフルさについていけなかったが、一年が経ち、違いを比較できるくらいにはなったのだと、その時感じた。そういった意味でRosso Coneroは、自分の成長に伴って違う面を見せてくれるワインなのかもしれない。

2018年度イタリア研修報告 マルケ編 その1

“Rosso Coneroの地 カメラーノ”
と書かれた垂れ幕、 人で賑わう土曜日の夜

2018年度イタリア研修報告 マルケ編 その1

比較的落ち着いた日曜日の夕方

2018年度イタリア研修報告 マルケ編 その1

試飲ブースの様子