アルバータ大学オンライン留学プログラム

掲載日:2020.10.07

農食環境学群 循環農学類
2年 高見怜凌

私は2020年8月11日~8月22日の日程でアルバータ大学オンライン留学プログラムに参加致しました。2週間弱という短い期間ではありましたが、プログラム全体を通して、多様性の重要性を感じた11日間となりました。まずはこのような貴重な機会を与えて頂き、深く感謝しております。この度のプログラム参加に関し、以下のとおりご報告致します。

 

1.動機と目標、そして不安

まず、私は中学2年生の時にカナダの語学学校に留学した経験をもとに、大学ではフィールドワークの多い留学に参加してより深い知見を得たいと考えていました。しかし、新型コロナウイルスの流行により、海外への渡航は疎か、自宅から気軽に外出することもままならない状況となりました。友人との交流も浅くなり、鬱々とした日々を過ごす中で、このプログラムに参加したら実際の海外留学にまでは及ばなくとも、何か得られるものがあるのではないかと思い、参加を決めました。更に、ただ受動的に参加するだけでは得られるものは最小限になると思い、英語での交流によって国外の文化への見聞を深め、「多様性」や「異文化理解」の重要性を改めて考えるという目標を設定しました。

しかし、プログラムが始まる前のプレイスメントテストでいきなり出鼻を挫かれました。テストは、オンラインでも英語の4技能が満遍なく試される形式になっており、結果は通知されません。しかし、テストを受けているときに、単語や文法の忘れ、リスニングが聞き取れない、ライティングの文章が思いつかないなど、自分の実力のなさをまざまざと実感しました。前述した目標以前の問題で、こんな状態で授業が聞き取れるのか、ディスカッションできるのか、など不安しかありませんでした。

案の定、7月28日に行われたオリエンテーションでは、自己紹介や授業内容の説明などは辛うじて聞き取れたものの、オンライン留学特有のアカウントやパスワード設定などの話は一切理解できませんでした。もう一度説明してほしい旨をなんとか伝えて同じ説明を分かりやすくしてもらったところ、かろうじて断片的に聞き取ることは出来ました。オリエンテーションによって不安は拭われるどころか、募っていきました。

 

2.実際の授業と自分自身の変化、そして発見

8月11日の初回の授業はとても緊張して迎えました。初回は自己紹介がメインでした。クラスメイトの自己紹介は聞き取れるところが多かったですが、担当の先生のMs. Merrittの自己紹介は半分ほどしか聞き取れませんでした。

最初の2日間は英語が聞き取れず、自分が次の日までに何をすれば良いのかも分からず、かなり苦労しましたが、Ms. Merrittは何度も伝え直してくださり、真剣に向き合ってくれたため少しずつコミュニケーションが取れるようになっていきました。また、授業は当然全て英語で行われるのですが、Ms. Merrittの英語はとても聞き取りやすく、私たち学生が分からないような単語が出てきたら毎回別の言い方で教えてくれるので、リスニングやボキャブラリーの感覚が掴みやすいと感じました。

クラスメイトは全員日本人の大学生でしたが、授業中に少人数に振り分けられるブレイクアウトルームでのディスカッションなどはすべて英語であることから、なかなか思うように進まないこともありました。その時は、時々見回りに来てくれるMs. Merrittにディスカッションの内容や方法についての的確なアドバイスをもらい、なんとか自分の意見を伝え、相手の意見を聞き、意見のすり合わせなどをしていきました。

全体でのディスカッションでは、クラスメイト全員が聞いているため、間違えたり伝わらなかったりしたらどうしよう、という思いに駆られて、自発的な発言を求められると口が重くなっていました。また、積極性に欠ける要因として、自分の英語力の低さ故にディスカッションの内容を掴むまでに時間がかかってしまい、自分から話を切り出すのが難しかったことがあります。ひどいときには、ようやく内容を理解したと思ったらすでに話題が切り替わっていたということも数回ありました。

そんな自分にもどかしさを感じていましたが、それも授業回数を重ねるたびに、改善されていきました。なぜなら、分からないことをさらけ出したり、ミスをしたりするのは恥ずかしいことではなく、当たり前のことなのだと実感する体験が日に日に増えていったからです。例えば、知らない単語の意味を聞いただけで”Nice question!” と言ってくれたり、自分の意見を言うと、大幅に的外れなことを言わない限りは肯定してくれたりといった具合です。さらに、「ミスをすることを恐れないで積極的に発言しなさい」「あなたたちは生徒なのだからパーフェクトを求めるよりも新しい学びに対して貪欲になったほうがいい」など、Ms. Merrittからの繰り返しの声かけもとても励みになりました。

プログラムの後半では、指名される前に自発的に発言したり、ブレイクアウトルームでのディスカッションの進行をやってみたりと、自分でも驚くほどに積極的に話せるようになっていました。

また、授業によっては、現在アルバータ大学に留学している外国人を招いて、ディスカッションをする時間もありました。アジアやアフリカ、ヨーロッパなど、国籍は様々でした。私は、トルコ人、中国人、インド人と話す機会がありましたが、出身地によって英語の発音にかなりの差が生じていることを初めて知りました。インドの方は、巻き舌が強く、とても早口でした。中国の方は、口をあまり開かず、拗音が目立ちました。トルコの方はゆっくり話していましたが、破裂音が印象に残る話し方でした。どれが良い悪いではなく、それぞれの母語の発音の特徴がそのまま残っていて、とても興味深かったです。

このことから、綺麗で正確な発音を心がけることも大切だけど、まずは話して伝えようとする姿勢の方がよほど大事なのだということを学びました。

アルバータ大学オンライン留学プログラム

ブレイクアウトルームでのディスカッションの様子

アルバータ大学オンライン留学プログラム

Ms. Merrittのクラス全体

3.別の角度から見たプログラム

ここまでは英語でのコミュニケーションの面に絞って授業のことを書いてきましたが、ここからは異文化理解や交流などの面でプログラムを振り返ります。

まず、今回のプログラムは実際にカナダに行くものではなかったので、生活様式での文化の違いや、その国や町の自然などの特徴を実体験として肌で感じることは難しかったです。しかし、ホストファミリーや外国人のクラスメイトがおらず、24時間英語で生活して異文化の中で暮らすという実際の留学とはかなり違う特殊な体験ができました。

毎日の授業では基本的にMs. Merrittと日本人のクラスメイトのみで文化についてなどのディスカッションを行いました。全10回の授業で2回ほど現在アルバータ大学に留学している学生を交えての授業がありました。

授業の内容としては、日本文化の紹介に始まり、文化の比較、多文化・多言語主義など、“文化”に重点を置いたものが多かったです。中でも、multilingualism(多言語主義)の授業内容はとても印象に残っています。授業では、英語とフランス語の2つの公用語があるカナダの一般家庭の様子を描いた動画を視聴しました。内容は、母が英語で子供に話しかけ、子供はところどころフランス語や英語を場面に応じて使い分けて返答するもので、日本語のみを公用語とする単一言語社会の日本ではあまり見ない光景で不思議な感じがしました。その動画の後に、2つ以上の言語を公用語とすることのメリット・デメリットや、日本が第二公用語を制定するならば何語が良いのかについてなど言語についてのディスカッションを行いました。その過程で、言語はその国や社会の象徴であること、文化を形作っているもののひとつは言語であるということ、言語の違いが新たな文化を生むこともあれば対立を生むこともあるということなど、文化について語るうえで言語が如何に重要かを学びました。

また、Sustainable Development Goals (SDGs)についての授業の時には、留学生も交えて、ブレイクアウトルームで少人数でのディスカッションも行いました。私のグループにはトルコ人の女性が来てくださって、「トルコは東西に長く、日本と同じように四季がある。」などとトルコについて少し紹介してくれました。また、「いつか日本の春の桜を見てみたい。」と日本のことにも興味を示してくれました。しかし、日本のスーパーマーケットの写真ではビニール袋包装が目立ち、環境に良くなさそうという意見も教えてくれました。そのことから、日本に住んでいたら当たり前に感じることでも、日本の外から見れば当たり前ではないことはたくさんあって、「当たり前」や「普通」といった感覚が強すぎるのは、異文化理解を深める上での壁となると改めて気づかされました。

このように、授業で取り扱った内容やディスカッションにより、様々な国の文化を知ることが出来ました。しかし、前述したように、実際に渡航しているわけではないので、知識として蓄えることはできても実体験としてはあまり感じられません。だから、異文化を理解した「つもり」という状態に陥らないように注意しなければなりません。そのために、肌で感じることが少なかった分、より知識を深めたり、このプログラムで知り合った外国の学生と今後も積極的に交流をしたりしていきたいと考えています。

アルバータ大学オンライン留学プログラム

SDGsについての授業の様子

4.まとめにかえて

私は今回のプログラムで、先に述べたこと以外にも、実際に渡航する留学で得られるものとはまた違ったものを得られたと考えています。海外留学では英語のみでの生活になるため、文法や単語のような英語力を養うというよりは、とにかく話すこと、トライすることに重点が置かれていたように感じます。しかし、オンライン留学では、フィールドワークがなく座学の授業だけなので、文法など基礎的な英語力を振り返るのにとても有意義な時間となりました。また、授業以外の時間をホストファミリーと過ごすこともないので、復習や自学に充てられたことも英語と向き合う良い時間になったと思います。正直に話すと、オンライン留学では海外留学で得られるもの以上のものは得られないと私は思っていました。しかし、海外留学とオンライン留学、どちらが良いか悪いか、どちらが上か下かではなく、どちらにも良い点があって、得られるものがあって、参加することで結果的には自分の成長を感じることが出来ました。また、このプログラムで得た様々なスキルなどを使って海外留学に挑戦することもさらなる成長につながるのではないかと考えています。海外留学に行かなかったとしても、オンライン留学で得たものを無駄にしないようこれから先も精進していきます。