海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)2025年9月 広井千紗都さん

掲載日:2025.10.15

循環農学類(2024年3月卒)広井 千紗都

9月に入り、朝夕の冷え込みが一層厳しくなってきました。最近ではヒーターの使用を開始していますが、寒暖差の影響もあり、体調が優れない日もありました。

今月は大規模な牛の移動はほとんどなく、主な作業は、放牧地から逃げ出してハイウェイに出てしまった牛の捕獲および、以前の移動時に見つけられなかった牛の捜索でした。特にハイウェイに出た牛は、自動車との衝突事故の危険があるため、目撃情報があった場合には即日で対応を行います。また、放牧地付近に住む住民から牛の目撃情報が寄せられた場合も、速やかに準備を整え対応にあたります。

海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)2025年9月 広井千紗都さん

この日はハイウェイに出てしまった10頭ほどの牛を探しに行きました

その他の作業としては、秋の出産シーズンに合わせて親子ペアとなっている牛を集め、母牛と子牛を分ける作業を行いました。この農場では、出荷時期の分散などを目的として、出産シーズンを春と秋の2回に分けています。出産の際、24時間体制で人の監視が行われるのは、難産が多い初産の春の牛に限られており、それ以外の経産牛については、春・秋ともに主に放牧地で飼養されている間に自然分娩が行われるのが一般的です。分離された子牛はトラックに載せてフィードロットへ移動させ、ワクチネーション(予防接種)等の処置が行われます。

海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)2025年9月 広井千紗都さん

子牛を仕分けして奥に見えるトラックに乗せている様子。トラックは大きさにもよりますが、最大で80頭ほど載せられるものがあります。

また、今月4日から6日までは、地元で開催されたカントリーフェアに参加しました。私が研修している農場からも牛が出展されており、審査は3日間にわたって実施されました。牛を引くのは主に地元の子どもたちで、1日目は牛の体型、2日目は牛を引く人の所作などが審査対象となります。3日目にはセールが行われ、それまでの審査で高評価を受けた牛ほど高値で取引されます。売却によって得られた収益は、牛を引いた子どもたちの将来の学費などに充てられます。そのため、保護者はより良い牛を育てるために多くの資金を投じて、このフェアに臨みます。

昨年も同様のフェアに参加しましたが、当時は英語の理解が乏しく、説明を聞いても十分に内容を把握することができませんでした。しかし、アメリカでの生活が1年を迎えた現在では、アナウンスもある程度聞き取れるようになり、牛の評価ポイントなども理解できるようになったことで、自身の成長を実感しました。

海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)2025年9月 広井千紗都さん

カントリーフェアの鶏の審査です。ほかにもウサギやヤギ、ヒツジなどもいました。

農場での研修も、残すところあと1週間ほどとなりました。来月8日にはカリフォルニアに向けて出発予定です。あっという間の研修期間でしたが、多くの人と交流し、たくさんの思い出ができたこの町を離れるのは非常に寂しく感じています。残りの研修期間は、新たに来た研修生に対して、私が1年間で学んだことを仕事を通して伝えながら、最後まで悔いのないように過ごしたいと思います。