海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・アメリカ)2025年2月 広井千紗都さん
掲載日:2025.03.14
循環農学類(2024年3月卒)広井 千紗都
2月になり厳しい寒さが2週間ほど続いた後だんだんと気温は暖かくなり最近は太陽が出ている日には汗をかくようになってきました。山に積もった雪は解け、谷のある道路には雪解け水による大きな水たまりができています。今年は例年に比べると暖冬で雪も少なかったそうなのですが、それでも一番寒い時期は北海道にいた時よりも寒いと感じました。
作業は先月から大きく変わりました。1月最終週あたりから本格的に分娩シーズンが始まり、ワーカー全員でシフトを組んで24時間体制で牛を見張ります。私は1月と同じように朝、放牧地にいる牛たちに餌やりをした後から15時までのシフトで待機しています。ここでは難産になりやすい未経産の牛を大きな囲いの中で生活させ、間隔を置きながら囲いの中を見回って陣痛が来ている牛を見つけたら建物の中にあるペンの中まで追ってそこで分娩させるという方法をとっています。ペンの中に追った牛は破水を確認してから30分を目安に確認し、分娩が進んでない牛や逆子の牛など問題がある牛がいた場合は母牛を固定させるための機械まで追い、人力で子牛を引っ張り出します。子牛と母牛はその後子牛の毛が乾くまでそのペンの中で待機させ、毛が乾いたら耳にタグをつけて薬を打った後に少し大きめのペンに移し5ペア程集まったあと放牧地に移動させます。牛を移動させた後のペンは掃除して次の牛に向けて新しく敷料を敷きます。分娩頭数は、最初に人工授精(AI)による約300頭の牛が2月の中旬ごろまで、その後に時期をずらして約100頭の人工授精以外の牛がシーズンに入ります。中でもAIの牛たちのシーズンは忙しく、10日で約200頭もの分娩がありました。この時期は特に寒い時期と重なっていたので生まれた子牛が寒さで凍えないように敷料をたくさん敷き、それでも弱い牛は暖房の聞いている暖かい部屋まで運んで温めました。
また、子牛が生まれた後も母牛との様子を見て母牛が子牛を舐めない場合は子牛の体に牛が好む香りのする粉を振りかけ、子牛の元気がない場合は母牛を固定する機械まで追い、乳を手搾りで搾って子牛に飲ませます。私も搾乳をやらせてもらったのですが、上手だとほめていただき、それ以来搾乳は任せてもらえるようになりました。学生時代に搾乳のアルバイトをしていてよかったです。搾った初乳を飲ませるとほぼ瀕死状態だった子牛も見違えるように元気になるので初乳はマジックだとみんな口をそろえて言います。そして、頭数が多いと中には子宮脱を起こす牛や奇形、死産もあります。奇形の牛は夏の放牧期間中に母牛がルピナスという植物を食べてしまい、それが胎児に影響を与えるそうです。放牧させる前にチェックをするらしいのですが、風で種が飛んできてしまい完全になくすことは難しいそうです。
最近は放牧地に移動した子牛の治療も教わり、白い下痢をしている子牛や元気のない子牛を見つけてローピングの要領で捕まえて投薬をします。それでも元気のない場合は栄養剤を作りチューブで飲ませます。私はまだまだロープを投げて牛を捕まえることがあまり上手くないのですが、これからまた暖かくなると病気も増えてくるのでよく観察して見逃しの無いように気を付けます。毎日が大変で失敗することもありますが、とても貴重な経験をすることができます。まだ分娩シーズンは続くので新しいことを学びながら気を抜かずに自分ができることに取り組んでいきます。