海外農業研修報告書(国際農業者交流協会・ドイツ)9月 竹本圭翔さん
掲載日:2024.12.24
循環農学類4年 竹本 圭翔
暑さに苦しんでいたのも束の間、気づけばドイツにも秋が訪れていました。今では日中の気温が15度程度にしか上がらず、肌寒さを感じる日々が続いています。日本から持ってきた冬服は少なく、唯一の防寒着であるヒートテックを早くも着用して仕事をしています。冬が本格的に訪れたら、寒さに耐えられるか今から心配です。
9月の第3週、ドイツの機関「Schorlemer」が主催するセミナーに参加しました。このセミナーでは、ドイツに研修に来ている他国の研修生と交流したり、ドイツ国内の農場を訪問して農業について学ぶことが目的でした。初日には、自分自身の紹介と現在研修している農場について英語でプレゼンテーションを行いました。日本でもプレゼン経験はほとんどなかったため緊張しましたが、なんとかやり遂げることができました。周りの研修生たちは皆流暢に英語を話していたので、ついていくのに必死でした。
農場訪問では、酪農、カボチャ農家、小規模酪農、有機農家、果樹農家を見学しました。最初に訪れた酪農家では、なんと日本の和牛を飼育していました。日本の牛がドイツでも評価されていることを知り、少し誇らしい気持ちになりました。また、牧場の見学後には、その和牛を使ったハンバーガーをいただき、その味に感動しました。
セミナー期間中は、ドイツの農業学校に滞在しました。この学校では、牛、豚、鶏、果樹など、さまざまな農業分野を学ぶことができる理想的な環境でした。見学した牛舎には、ロボットによる自動搾乳や暑熱対策用のミスト、通気性を高める換気システム、さらには牛のルーメン(胃の一部)に装着して体温や発情のタイミングを測定するカプセル型のセンサーなど、最先端の技術が取り入れられていました。また、学校のトラクターや作業機の多くはメーカーから提供されており、すべて最新の機器ばかりでした。トラクター好きの私にとっては夢のような時間でした。中でも最も感動したのは、太陽光を動力にした全自動播種機です。GPSを基に最適な播種作業を行うその技術には圧倒されました。研修の合間には、研修生みんなでピザを作って食べたり、夜は卓球やジェンガをして楽しい時間を過ごしました。研修生の中には、ウガンダやタンザニアから来た参加者も多く、彼らから「私たちの国はJICAのおかげで多くの日本人に支えられている。だから日本が好きなんだ」と言われ、とても嬉しかったです。一方で、彼らに「仕事で得たお金は全て自分のものになるのか」と尋ねられ、当たり前のように「そうだよ」と答えると、彼らは笑いながら「私たちは兄弟にお金を分けなければならない」と言いました。理由を尋ねると、「兄弟に仕事がないからだ」と教えられました。この瞬間、私は自分の「当たり前」が決して世界の「当たり前」ではないことを改めて痛感しました。自分が普段何気なく享受している安定した仕事環境や、得た収入を自由に使えることは、実は恵まれた状況だったのです。それに比べて、彼らは家族や兄弟の生活を支えながら、自分自身も必死で働いているという現実があります。この違いを知ったとき、少し恥ずかしくさえ感じました。この経験から、もっと広い視野を持って物事を見る必要があると気づかされました。
セミナーの帰りには、プライベートでミュンヘンを訪れました。最初に訪れた観光名所はノイシュバンシュタイン城です。ここは、シンデレラ城のモデルとなったとされる美しいお城で、周囲の山々と湖に囲まれたその景観は、まるで絵本の中にいるような気分にさせてくれました。そして、ちょうどこの時期に開催されているオクトーバーフェストというドイツのビール祭りにも参加してきました。この祭りは、世界的に有名なイベントで、毎年多くの観光客が集まります。さまざまな種類のビールや伝統的な料理、アトラクションを楽しむことができます。地元の方々は、ディアンドルという民族衣装を着てお祭りに参加しており、その華やかな装いが一層お祭りの雰囲気を盛り上げていました。
来月からも気を引き締めて研修に取り組みたいと思います。