2023年度 タイ・カセサート大学単位互換プログラム 11月報告書(砂﨑さん)
掲載日:2023.12.21
タイ・カセサート大学単位互換プログラム報告書(11月)
獣医学群獣医学類5年 砂﨑香恋 (Karen Sunazaki)
まとわりつくような暑さに耐える日々が一変し、日中でも涼しい風を感じられる季節となりました。現在私はカンペンセンキャンパスのあるナコーンパトム県よりも南に位置するホアヒンの動物病院で4週間の研修を行っている最中です。2ヶ月間のカンペンセンキャンパスでの生活を終え、11月中旬から新たな拠点での生活を始めています。南国気分を楽しみつつも真面目に日々の学びに取り組んでいます。
美しいビーチでパイナップルスムージーを片手に記念の一枚
さて、今回の報告書では前回に引き続きカンペンセンキャンパスでの第6週以降の授業について、そして第9週から始まったホアヒンの動物病院での研修についてご紹介します。今月の報告書では第10週までの内容をお伝えします。また、前回の報告書でお伝えした通りタイでの日頃の過ごし方や友達との交流、週末や観光地での思い出を最後に綴ります。
動物病院から自転車で数分のカオタキアップビーチ
まずは授業内容です。
第6週:Exotic
馬医療に続いて楽しみにしていたエキゾチック動物・野生動物診療では、動物病院内での一般診療の他、猛禽類診療所(Raptor Clinic)や象の診療所(Elephant clinic)で実習を行いました。病院内では様々な動物に出会う機会があり、間近で診療を見学しました。治療中の飼い鳥や蛇、アヒルなどの他、野生の動物もいました。交通事故に遭い甲羅が大きく破損してしまった野生のカメが数匹入院しており、朝処置の際に頸部の柔らかい皮膚を狙って皮下注射で抗生物質の投与をさせてもらう機会が何度かありました。野生のカメは雨季になると生息地を行き来するため道路を頻繁に横断するようになるのだそうで、季節や気候の変化に伴って車にはねられ重傷を負った個体が続々と病院に運び込まれてくるのだと聞きました。交通事故による外傷とは別にそれぞれのカメは問題を抱えていて、それらの治療内容についても詳しく聞くことができました。状態の悪いカメは脱水になっていることが多く、雄では陰茎脱の個体も偶発的にですが時に確認されるとのことでした。また、感染症で甲羅が広範に壊死したような、湿ったような状態になってしまった個体も実際に見ることができました。どれも興味深い症例で、その場で聞いてわからなかったことを後ほど調べてみると新たな発見があって面白かったです。入院中のカメのうち2匹は見学中に治療が終わったため、遠くの池に放ちに行くのに付き添いました。荷台に乗せられていたときはどこが頭なのかわからないほど縮こまっていたのに、到着して地面におろしてからすぐさま一直線に池に向かい、トポン!と心地よい音を立てて躊躇なく水にダイブしていった様子が面白おかしく、その日一番印象に残った出来事になりました。あっけないお別れでしたが、2匹の姿が見えなくなるまで先生方と一緒に見守れてよかったです。
一般診療では色とりどりのインコやオウム、闘鶏、ウサギ、フクロモモンガ、ハムスター、ワニ、フクロウなどの検査・治療を見学しました。インコ・オウムと闘鶏の症例が件数としては圧倒的に多く、その中でも自咬症、毛引き症、骨折あるいは脱臼などの治療場面を目撃することが多いと感じました。私は実家でコザクラインコを飼っているので彼女の健康には十分に気をつけて帰国したらたくさん遊んであげたいと、問題を抱えるインコたちが来る度に強く思いました。飼い主さんが一緒にいる時間を十分に作ってあげられず、問題行動を引き起こすようになってしまったというヨウムを見たときは我が家の可愛いインコも私がいなくて寂しい思いをしているのではないかと心苦しくなりました(私の心配はよそに家族と楽しく過ごしているそうです)。
動物種ごとに保定の仕方が異なるのは当然のことなのですが、大小様々な動物たちを目の前で迅速かつ適切に保定するVTさんたちのスキルに感心せずにはいられませんでした。私たちも空き時間に病院で飼われているうさぎたちで保定の練習をさせてもらいました。はじめは手がもつれてなかなかうまいこといかず、とっさに暴れ回らないか不安になりながら何度か挑戦しました。形としてはできるようになりましたが、暴れん坊な子に関しては難しいので自信はありません。
ある日は個人経営の動物園でのカピバラの治療に同行しました。先生方数名で少々手間取りながらも無事に保定し、麻酔導入を行う様子を見学しました。麻酔の効果を待つ間にオーナーさんに動物園の中を案内してもらい珍しい動物たちと戯れたり、間近で観察したり、とても貴重な経験になりました。図鑑でしか見たことがないような色鮮やかな鳥類や見たこともない希少な哺乳類・爬虫類、大型の陸ガメなど様々な動物が飼育されていて驚きの連続でした。
カピバラは脚を骨折してしまったそうで、プレートで整復したあとの術後経過の確認のためにレントゲン撮影を行いました。カピバラは脚を骨折をし易い動物らしく、毎年1件ほど骨折整復の依頼があると聞き驚きました。一般的に術後の経過が良くないことが多いそうで先生方が道中しきりに代替案(切断など)について話していたので結果が心配でした。嬉しいことにプレートで十分に骨が安定してきていることが撮影結果から見てわかり、その日はオーナーさんに今後の計画や薬の説明をして無事に診療が終わりました。カピバラは見た目とは裏腹に四肢の骨が折れやすいため、飼育時には注意してあげないといけない繊細な動物なのだと知る機会となりました。てっきり身体が大きくずんぐりとした体型の分、脚はしっかりと支えられる丈夫な作りなのだと思っていましたが、動物の特徴や行動についてよく把握していないと思わぬ事故や病気に繋がりかねないのだと今回の事例で勉強になりました。
先生方との話からカピバラに限らず野生動物は治療に伴う麻酔のリスク、術創管理(環境整備など含め)、使用薬剤、保定、薬剤投与の方法など多くのことを考慮しなくてはいけないため、治療は一筋縄ではいかないことが多いのだと教わりました。また、飼育されている個体は別として捕獲・保護された野生動物に関しては時に治療費についても課題があるとの話が印象深かったです。大学病院では野生動物保護・治療に関する基金を募っているそうですが、それだけでは当然すべてをまかないきれないこともあるようで、保護してくれた人とのトラブルが時に生じてしまうのだそうです。タイの国民性が関係しているのだろうとの先生の推測でしたが、動物を助けたい、困っている存在を放っておくことができないという人が連れてくることが多いとの意見に納得できました。タイは手を差し伸べてくれる心の優しい人が多いと感じます。善意による救護は素敵なことだと思いますが、野生動物の診療をしている責任のある立場に置かれた獣医師側からの意見にも賛同できました。感謝と葛藤が含まれた複雑な生の声を聞いて考えさせられることがたくさんありました。エキゾチック・野生動物の診療の現場は様々な動物種を扱えるオールマイティで憧れの職場だと感じていましたが、このような現実的な一面もあることを知れてよかったです。
猛禽類診療所と象の診療所での研修の日は午前中にフクロウの保定や身体検査のやり方を学び一人ずつ実践しました。緊張しましたが先生が丁寧にレクチャーをしてくれたお陰で自分自身で手を動かして実践できる良い機会になりました。とても勉強になりました。VTさんや数ヶ月間猛禽類診療所で研修をしていたイタリア人の友達の助けを借りて格闘しながらも頸静脈からの採血や皮下注射、趾瘤症(脚の裏に傷がないか、グレード評価など)のチェック、BCS(ボディコンディションスコア;体格・栄養状態の指標)のスコアリング、口腔内のチェックなどを行いました。猛禽類の診療を行うには繊細さと丁寧さ、迅速さが必須のスキルだと感じました。ストレスを与えすぎないように適切に保定し、無駄のない動きでハンドリングすることの大切さを学びました。
午後は象の診療を見学する予定でしたが入院中の象がすべて退院していたので残念ながら会えませんでした。その代わりに吹き矢や麻酔銃について学び、実際に自分たちでお手製の吹き矢を作り、実物大のトラの絵が描かれた的に当てる練習をしました。吹き矢づくり自体は容易にできましたが、いざ的に当てようとすると肺活量が足りていないせいなのか、手元のブレのせいなのか、なかなか狙い通りに吹けず一人だけ低空飛行ばかりを繰り出してはあたふたしていました。教わった通り筋肉の密度が高い大腿部(太ももあたり)を狙って何度か頑張りましたが結局近辺をかすっただけで終わりました。狙い通りの場所に当たっても薬液(練習では水道水)が注入されていないと意味が無いのでかなり練習とコツが必要だと感じました。私が吹き矢を使いこなせるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
エキゾチック・野生動物の診療施設ではほぼ初めての体験ばかりで実践的な学びが多く得られました。また、なかなか聞くチャンスの少ない様々な動物種の取り扱い方や治療に伴う困難、特殊な動物を扱うがための注意点、不動化や保定方法などについて先生方から直接教わることができてたくさんの刺激、経験が得られました。
第7週:Swine
次の週からはじまった豚の授業と実習はタイの学生と一緒に受けました。はじめに座学で豚の感染症やワクチンプログラム、ピッグフロー(群管理の方法など)の確認を行い、後日実際に問題を抱える養豚場を訪れてウイルス検査のためのサンプル採取や農家さんからの聞き取り調査を行いました。個別で豚の剖検を行ったり、PCRでのウイルス検出の模擬実習をさせてもらう機会もありました。
養豚場を訪れるのは初めてのことだったので事前に座学で先生にわからないことや知らない単語について質問をして予習し、農場での検査項目、評価基準、管理体制などについて付きっきりで教わりました。養豚場ではタイの学生のあとについて各豚舎内を見学し、豚の群れを観察してまわりました。豚舎の環境で目についた問題点についても把握しました。ウイルス検査のために床や壁、餌箱や水飲み場などを拭って(スワブ)サンプルを採取し、群ごとに豚の唾液を縄を使ってサンプリングするお手伝いをさせてもらいました。別の離れた空き豚舎は過去にASF(アフリカ豚熱)の発生があったそうで、使用再開のために豚舎内におけるウイルス保有の有無を把握するべく環境中のサンプリングをしました。なかなかこのような場所に入らせてもらう機会はないと思うのでとても貴重な経験となりました。
養豚場で見つかった問題点をグループで考察し改善点についてディスカッションを行いました。はじめにタイの学生と日本人学生で分かれてそれぞれの視点から意見を出し合い、それらを照らし合わせたうえでプレゼンテーションの準備を進めました。Aquaticの授業でも感じたことですが、タイの学生はグループワークに慣れており役割分担がとても上手で意見のまとめ方や提示の仕方に工夫があります。参考にしたいと思うことばかりです。個々のセンスやスキルが光っていて素敵だと思いました。
私たちは北大生の二人と協力してプレゼンテーションを完成させ、翌日タイの学生に交じって発表をしました。私たち日本人グループの個別の発表(剖検所見と診断)とタイの学生と一緒に訪れた養豚場についての発表の合わせて2つのプレゼンテーションの準備があったため、普段よりも時間に追われて夜遅くまで学習室で残ってクタクタになりながら作業したのは今となってはいい思い出です。北大生の優秀な二人にたくさん助けられました。当日は大きな会場での発表だったため少し緊張しましたが丁寧に説明でき、質問への対応なども協力し合いながら行えたので良い経験となりました。タイの学生や先生方に質問をする時間もあり、ASFや口蹄疫などの疾病発生時の対応、国・行政からの指導、タイ国内での発生状況、日本との対応の違いや予防に関する話、ワクチンの使用状況の把握、今後の状況などについて広く話を聞けました。国による明らかな違いや国際的な課題について認識できました。
第8週:Pathology
この週はカンペンセンキャンパスで過ごす最後の週であったことに加え、興味のある分野についてタイで学べる特別な機会であったため一日一日を普段以上に意識して過ごしました。毎日異なる内容で病理学に関連した実習や座学が組まれており、愉快な病理医とともに自分たちの手を動かして実践的で充実した時間を過ごすことができました。普段本学の獣医病理学研究室で行っている活動の延長のようでありながらも扱う検体の違いや検査内容などから異なる視点で病理学の面白さを改めて発見することができて嬉しかったです。実習を担当してくれた病理医はタイ全土から送られてくる様々な検体の検査・診断に追われて忙しそうな印象でしたが、そんな中でも私たちに学びの機会を提供してくださり大変ありがたく感じました。臨床現場に直結する重要な役割を担っている先生方の指導のもと、普段行っている検査方法や診断の実際を学ぶ貴重な体験をさせてもらいました。先生が「コオロギからゾウまで」と例えを出しながら、どのような症例でも診ると宣言していたのがとても印象的でかっこいいと思いました。近年コオロギは食糧不足の危機における重要なタンパク源として注目されており、その先駆けとして食用コオロギの繁殖を妨げると懸念があるウイルスの調査を行うことも、広く捉えると病理学の分野に関連していて重要な研究なのだとの話に聞き入ってしまいました。てっきり外部から依頼された症例や家畜・公衆衛生に関連する疾病の研究などがメインに扱われているのだと思っていましたが、人の食にも密接に関わる重大なテーマが掲げられることもあるのだと、病理学の奥深さを知ることができました。
実習では血液塗抹標本を顕微鏡下で観察し、血球に潜む原虫を探しました。すべて実際に病院や農場の動物から提出されて検出できたもので、犬・鶏・牛・馬の血液中の原虫を観察しました。原虫は普段見慣れていないため見つけるまでに時間がかかりましたが、見えてくると特徴がわかって面白かったです。顕微鏡を覗くのが苦だと感じる人には大変な時間だったかも知れませんが、当初苦手意識を持っていた人も最終的には楽しく盛り上がっていたので案外ハマってしまうものなのかも知れません。私はというと、観察を楽しむ一方で久しぶりに顕微鏡を長時間覗くことに密かに緊張していました。情けないことに未だに顕微鏡酔いをしてしまうことがあります…。(このときは無事でした!)
与えられた課題として不明なサンプルのスライドの仮診断をつけた後、PCR検査を行って実際の診断結果と一致するかを確認しました。一部でコンタミや作業中のサンプルの入れ間違いを疑う結果がありましたが、概ね一致したという結論のもと、本来の結果とのばらつきについて考察し、先生方とディスカッションを重ねました。他にも免疫組織化学染色を先生から直々に教わったプロトコルで実践しながら作業の手順や注意点を学び、ある時にはタイで初めて鳥インフルエンザの検出をし、報告をした実績のある先生からお話を聞く機会がありました。知識や経験が豊富で権威のある先生から聞く話は深みがあり、獣医師として活躍する中でいつの日かぶつかるであろう困難など、今聞いてもなかなか理解が追いつかないような内容まで幅広くお話をしてくださいました。将来自分たちが一定のキャリアを積んで色々な経験を得た後にこの時の話がわかるだろうとのことだったので、その日まで自分の心の中にメッセージを留めておこうと思います。
実習では他にもアヒルの剖検を行いました。初めての経験だったので先生から直々に注意点や観察するべきポイント、雌雄での特徴の差について教わり、同時に行った鶏との違いを解説してもらいました。密な内容で実習をさせてもらえたこと、そして実際の動物の命を捧げてもらって実践的な学びが得られたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
帰国後もこの週でのモチベーションを励みに本学の研究室での活動に取り組んでいきたいです。
第9週:Surgery Unit(ホアヒン動物病院、伴侶外科)
ホアヒンの動物病院での研修は伴侶外科ユニットから始まりました。交通事故に遭った犬猫の症例が最も多く、骨折の整復や膝蓋骨脱臼の処置といった整形外科の手術のほか腫瘍の摘出手術の見学をしました。避妊・去勢手術では助手として参加し、皮膚縫合を何度かさせてもらいました。先生方やVTさんたちの熱い視線を感じながらも丁寧に縫合でき、先生方に褒められて嬉しかったです。犬猫に気管挿管をしたり、犬の歯のスケーリングのお手伝いをする機会もありました。また、眼科疾患の症例では術前の検査に立ち会って検査方法のレクチャーを受けました。
病院長であり泌尿器系疾患の手術を専門的に扱っている凄腕ドクターのポン先生はいつも現場を明るく盛り上げてくれる先生で、冗談を交えながらも手術の内容をいつも丁寧に解説してくれました。整形外科から軟部腫瘍まですべてをこなせる先生の技術を間近で見学できてとても勉強になりました。病院や手術というと少しピリついているような印象だったのですが、スタッフ全員オンとオフの切り替えが上手なのでメリハリのある働き方がこの病院では実現できているのだと思いました。特にポン先生や周りの先生方が愉快で穏やかな雰囲気を作っているおかげで皆が働きやすい環境が整っているのだと感じました。このような理想的なチームの中で将来は仕事がしたいです。
第10週:CCU/Critical Care Unit(ホアヒン動物病院、重症管理病棟)
次からの週は緊張が続く日々でした。CCUの名の通り重症であったり、緊急を要する処置が必要な子がいました。術後に特別な管理を受けるための犬猫が合わせて十数匹入院しており、突然の様態の悪化で危うい状況に陥った場面を何度か目撃しました。残念ながら目の前で亡くなってしまったケースや為す術がなく飼い主さんが獣医師と相談して安楽死を決断した場面にも遭遇しました。心が張り裂けそうになる辛い日もありましたが、学びの多い週となりました。安楽死を決断した家族とその愛犬のお別れに居合わせた際にはその家族の想いと彼らに寄り添いつつも専門家としての意見を丁寧に説明する獣医師の想いの両方が目に見えるように伝わってきました。英語でのやり取りだったため自然とその場の状況が理解できました。後々通訳してもらっていたらニュアンスが違っていただろうし、言葉では表現が難しい独特な空気感を含め異なる解釈になっていたかも知れないのでこのときは自分ですべてを把握できてよかったです。同じ空間にいながら2つの立場のそれぞれの気持ちを考え、遠くに離れてそっと見守って過ごしました。
CCUでは入院中の犬猫一頭ずつの管理に関する詳細なプランがあり、それに沿ってチームで密に連絡を取り合っていました。毎朝先生方が処置室の隅でミーティングを行っている様子を横目にVTさんのあとを追って朝処置(健康チェック、身体一般検査など)を見学していました。その後、担当の先生について治療に立ち会い治療方針や術後の経過について話をきいて空き時間を狙って質問をしていました。CCUでは突如として緊急事態に陥ることがあっても誰一人慌てることなく淡々と各自がスムーズに連携を取って対応し、その後は何もなかったように先程までやっていた仕事やミーティングに平然と戻ります。はじめの頃は驚きと困惑でとにかく部屋の隅にさっと避けて固唾をのんで処置を見守るしかできませんでしたが、何度か経験すると邪魔にならない程度の距離から集中して処置内容をメモできるまでには冷静に過ごせるようになりました。ただし、今でも鳴り響くアラーム音や犬猫が咳き込んだり、ガシャンと倒れ込むような音を聞くと心拍数が上がります。
一週間の中で症状の改善が目に見えて良好になった子も多く、変化を連続して観察できたこと、退院を見届けられたことが嬉しい思い出となりました。緊急事態にも動揺することなく冷静に対処できるスキルとハートの強さを鍛えたいとこの週で強く思いました。
ここからは旅の思い出、タイの友達との交流、カンペンセンキャンパスでの日常を紹介します。
カンペンセンキャンパスにいた頃の週末は主にバンコクに日帰り旅行をしていました。普段の授業との兼ね合いもあり、体調や体力と相談してあまり遠出はせずにまったりと公園でお散歩をしたり市場で買い物を楽しむことがほとんどでした。博物館や美術館、カフェ巡り、動物や蝶々が好きなので、バンコクを訪れた際にはそれらにフォーカスした旅を楽しみました。歴史上意味のある土地に行くのも好きなのですが、今回の留学ではタイの重要な場所、世界遺産などについて調べ尽くす時間が足りなかったので近い将来個人的な旅行で訪れようと思います。有名な寺院に観光に行った際にはもう少し歴史的な背景について予習をしておけばよかった…とちょっぴり悔やむこともあったので次回は下調べを念入りに行おうと思います。
市場はいくつか周りましたが、その中でもチャトチャックウィークエンドマーケットには複数回訪れており、たくさんの雑貨を見てまわるのが楽しくてそこでほぼ一日を過ごしていました。また、その近辺にある景観の良い広々とした公園を散歩するのが好きでした。公園の中には蝶と庭の昆虫館という場所があり、生きた色とりどりの蝶々と戯れて楽しい思い出ができました。一人旅は充実していて楽しいですが、葉山さんと一緒にSafari Worldという動物園や赤十字研究所にあるスネークファームに行って二人で思い出が作れたことも嬉しかったです。展示やショーを通して動物に関連する知識が増えたのもよかったです。
タイの友達とはカンペンセン近辺のカフェでタイティーを飲んだり、夜には市場(ナイトマーケット)に行って美味しいご飯を頬張りながら談笑し、和やかでゆったりとした時間を楽しんで過ごしていました。仲の良いアースという友人と森の中にあるカフェに行ったときが一番大切な思い出です。タイの友達と同じ授業に参加した週にはグループの人たちと毎日一緒に夜ご飯を食べに出かけており、毎週日曜日にはみんなでバドミントンをして汗をかいたあと美味しいご飯を食べに行くという習慣がとても楽しく幸せでした。
11月末には6年生を送る会に参加させてもらう機会があり、「秘密の花園」をテーマにパステルカラーや花柄のドレス、黒・黄色で蜂をモチーフにした衣装に着飾ってお世話になった友達と一緒に最後の時間を過ごせました。みんなの大切な記念の日に一緒にいられて嬉しかったです。
キャンパス内は自然が豊かであり、鳴き声のきれいな鳥が寮の周辺に生息していてバードウォッチングが身近に楽しめました。ランニングがてら近くのウォッチングサイトに行ったり、サイクリングで学内のあちこちに出かけていました。夕方になると夕日が寮の前の池に反射して幻想的でロマンチックな風景が楽しめます。また、昆虫博物館やローズガーデン、ユーカリ並木など自然を堪能できる素晴らしいロケーションがキャンパス内にはたくさんあってまだまだ探検しきれていないように思います。
私のお気に入りの場所は大きなブランコのある広場です。噴水と池もあって緑に囲まれた空間やそこの穏やかな雰囲気が好きなので近場のココナッツアイス屋さんに行くついでや図書館の帰り、授業後に時間があれば一人で訪れていました。ここはアースと葉山さんと過ごした特別な場所でもあります。
大学内の図書館は広く、興味深い本がたくさんあって自習にも集団で勉強をするのにも理想的な空間でした。Aquaticの授業で調べ物をするのに利用した際には試験前だったせいかいつもより混み合っていた印象でしたが、集中するのには十分なほど充実したスペースが有り、集団で勉強している人たちを見ながらこのような場所で試験勉強できたら良いなと少し羨ましく思いました。
カンペンセンキャンパスではお昼にほぼ毎日大好きなカオマンガイを食べに行っていました。お気に入りのお店があり、注文せずともお店の方が「いつものね」と言わんばかりにタイミングよく提供してくれるようになって嬉しかったです。
学内には毎週月曜日と水曜日に大きなマーケットが開かれ、そこでたくさんの美味しい食べ物やジュースを買っていました。気づいたら両腕にスイーツの袋をいくつも掲げ、炭水化物×炭水化物のオンパレード…と毎度しっかりと誘惑に負けていました。マーケットでは買いすぎに注意が必要です。
大好きなカオマンガイ
マーケットでよく買っていたご飯
今月は残すところあと数週間の研修期間となりました。ホアヒンの動物病院での実習は個人で過ごす時間がほとんどなので積極的に質問をしてたくさんの学びを吸収したいと思います。小動物臨床の現場について知らないことが多く、色々なことに挑戦できるチャンスがあって新鮮です。本学のクリニカルローテーションの記憶を頼りに挑戦することや、初めて見る処置に感動することもあります。見習いたいと思う、人として魅力的な先生たちに出会うことができ、これまでに授業で扱った症例や希少な症例について勉強できる機会に感謝の気持ちでいっぱいです。英語で内容を今よりも理解できるようにさらなる努力を続けたいと思っています。ホアヒンで過ごす週末の時間も大切に、残りの時間も頑張ります。
これを持ちまして今月の報告とします。来月の報告書では第11週以降の授業内容やホアヒンでの過ごし方、週末に訪れた観光地での思い出についてお話したいと思います。
ありがとうございました。