2023年度 牛乳について考える講座「乳製品と健康のつながり」における講演内容の質問に回答します

掲載日:2023.06.02

2023年5月13日(土)に開催いたしました牛乳について考える講座「乳製品と健康のつながり」にて寄せられた質問について農食環境学群食と健康学類 栃原孝志准教授が回答します。

【質問1】スーパーに成分調整牛乳と成分無調整牛乳がありますがタンパク質の量にちがいはありますか?成分調整牛乳にはプラス鉄とかあり、栄養的にはどちらが有効なのかと思いました。

(回答)ご質問ありがとうございます。
成分調整牛乳と成分無調整牛乳とありますが、成分無調整牛乳はその名の通り、牛から搾ったミルクを殺菌してそのままパックしています。一方、成分調整牛乳はスーパーで販売されているアイテムの多くはウシから搾ったミルクのうち、脂肪分を幾分か除いて殺菌しパックしています。タンパク質量として考えると、成分無調整牛乳よりは成分調整牛乳の方が、脂肪が少ない分、多くなっています。
スーパーでは牛乳の並んでいる棚に鉄分を補給したようなパッケージの飲料を見かけます。ご質問のとおり「○○ プラス鉄」 「○○ Ca鉄」などのようなものがありますね。生乳から作られる様々な乳製品を組み合わせ、さらに「鉄(ピロリン酸鉄)」「炭酸カルシウム」「ビタミンD」「ビタミンB12」「葉酸」など日常生活に不足しがちな微量栄養素をバランスよく配合したアイテムも販売されています。牛乳を1日1杯飲んでいる習慣があるならば、さらに一歩進んでサプリ的要素を含むこういった乳飲料を摂取するのもよいと思います。
ただし、これらの飲料は疾病治癒の効果を持たせることは避ける必要がありますので、健康上の問題については医師等とご相談していただければと思います。

【質問2】牛乳の味について教えてください。先日、根釧と十勝の牛乳の飲み比べをした際に味の違いが想像よりあり驚きました。味の違いがうまれる要因はどんなものがありますか?一般的な道内の地域ごとの味の差はあるものですか?

(回答)ご質問ありがとうございます。
牛乳の原料である生乳はウシの体内で合成されます。合成されるときに何を材料にするかというと、ウシが食べるエサです。たとえば放牧環境で飼育されている牛は生草を食べます。生草の色素(カロテン)を多く含み、これが脂肪に溶け込み少し黄色みが強くなります。したがって、ミルクの色が強くなるのは、青草を食べている初夏から晩秋といったところでしょうか。
では風味の話しです。酪農家は独自の考え方や地域性からエサの配合や量を変えています。エサの変化は牛乳の風味にダイレクトに反映されます。おそらく同じ地域でも酪農家が異なれば、生産される風味も異なるでしょう。

【質問3】成分調整牛乳と無調整牛乳の違いと使い分けが必要な人はどの様な方なのか。

(回答)ご質問ありがとうございます。
成分調整牛乳と無調整牛乳との違いですね。無調整牛乳がウシから生産された生乳をそのまま殺菌の後パックしているもの、成分調整牛乳は生乳の中の成分の一部を取り除いているものを指します。多くの場合、脂肪分を取り除いています。両者を比較すると、無調整牛乳は濃厚、成分調整牛乳はあっさりといった印象でしょうか。これらは脂肪分が多いか少ないかの違いです。好みの問題でもありますが、一方では価格にも若干の差がありますね。健康効果にはほとんど差がないと思います。

【質問4】乳脂肪分3.8%と4.0%以上を飲むと影響は何かありますか?

(回答)ご質問ありがとうございます。
牛乳に含まれる脂肪分やタンパク質は、季節やエサなどによって変動します。北海道では夏から秋にかけてそれらの割合が低くなる傾向にあります。牛乳の表示では、乳脂肪分、無脂乳固形分(タンパク質と乳糖が主成分)の割合が記されていますが、「○○%以上」と記されています。年間通して割合が安定しないため、下限値を表示しているのです。
おそらく質問者様は、乳脂肪分に関して健康面への影響についての見解で質問されているのかと推察します。
手元にある資料(五訂日本食品標準成分表)から算出した、ホルスタイン種(国内の大部分の乳用牛)とジャージー種(日本の乳用種頭数としては1%未満)の牛乳の成分値(コップ1杯あたり)があります。
ホルスタイン種 脂肪分3.7%、タンパク質:3.2%、カルシウム227mg、エネルギー:136kcal
ジャージー種 脂肪分5.1%、タンパク質3.6%、カルシウム268mg、エネルギー:165kcal
1日に必要とされる推定エネルギー量(日本人の食事摂取基準2020年版)では、18~29歳女性(身体活動レベル:ふつう)の場合、2,000kcalとされています。
コップ1杯のエネルギーが各牛乳でどの程度の割合となるかというと、
ホルスタイン種(脂肪分3.7%):6.4%
ジャージー種(脂肪分5.1%):7.8% です。
ご質問のあった牛乳についての詳細はお答えできないので、各メーカーに問い合わせて頂きたいのですが、カロリー面において影響があるかについては、大きな差はないのではと思います。
なお、牛乳にはカルシウムが含まれています。18~29歳女性の場合、推奨量1日あたり650mgとされています。カルシウムはタンパク質の量とほぼ増減が一致します。

【質問5】バターと似ている「マーガリン」はどのようにして作られているのでしょうか。また、乳製品とは別物とも言われ、食べても大丈夫なのでしょうか?

(回答)ご質問ありがとうございます。
主原料が乳であるバターと用途が同じであるマーガリンは、主原料が多くの場合が大豆油や菜種油、コーン油といった植物油です。
100年以上も前にバターの代用品としてフランスで開発されたマーガリンは、バターの組成に似せるために、油に水や塩、乳製品、色素としてのビタミンなどを入れて、本来混ざり合わないはずの油と水分が混ざり合うよう、乳化という工程を経て作られます。
マーガリンは水分のごく細かい粒が乳化剤というもののはたらきで、安定的に油の中に漂った形で存在しています。これはバターも同じ状態です。
マーガリンが食品として安全かということについては、様々な階層の人たちが意見を述べています。
とくに、食品に含まれる脂肪成分のうち、トランス脂肪酸(トランス型の二重結合を有する不飽和脂肪酸)という成分は、悪玉コレステロールとされるLDLコレステロールを増加させ、善玉コレステロールと言われるHDLコレステロールを減少させるはたらきがあると言われています。またこの成分は、動脈硬化などの虚血性心疾患のリスクを高めるとの報告もあります。
マーガリンには製造工程の中で、トランス脂肪酸が若干生成してしまうとされています。
なお、業界団体(日本マーガリン工業会)では、マーガリンと摂取する人の健康に関する情報を発信しています。ご一読いただければ幸いです。
日本マーガリン工業会「分析結果と見解」
URL: https://j-margarine.com/newslist/

皆様のご参考になれば幸いです。今後とも本学の市民公開講座を何卒よろしくお願いいたします。