トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム(ウガンダ)活動報告 12月
掲載日:2019.01.08
獣医学群獣医学類5年 梅原悠季
ウガンダでの生活も早いもので2か月半が過ぎました。クリスマスと年末をウガンダで過ごし、いつもと違う街の雰囲気や日本とは異なる過ごし方に触れ、楽しく新年を迎えています。
今回は1.酪農家女性へのワークショップ 2.カベーラ病手術 3.ウガンダのクリスマスと年越し について紹介しています。
1.酪農家女性へのワークショップ
多くのアフリカの国では男尊女卑がまだまだ常識として考えられ、プロジェクト協力農家の中でも女性が働き男性が収益を得るという状況が多く見らます。この問題に切り込むべく、酪農家関係の女性のみを集めたワークショップ(WS)を行いました。WS開催の条件は、女性のみを集めること(家庭で権力を握る男性が同伴してしまうと女性から真実を聞き出しにくくなる)、女性達が集まりやすい時間でWSを開催すること(家事や酪農作業に追われていない時間に合わせて設定する)、主催者側はなるべく女性がメインで関与する(女性ファシリテーターにすることで参加女性達が話したいことを話しやすい雰囲気を作る)。これらを現地女性普及員に伝え、参加者集めをお願いし当日を迎えました。準備万端で会場に向かい、待つこと1時間。開始時間を30分過ぎても、参加者らしき女性は1人も現れません。いるのはサブカウンティー職員と近所の子供だけです。普及員が農家一軒一軒に電話して参加できるか聞いてくれましたが、どこもクリスマス直前で準備に追われとても参加する時間はないとのことでした。
そこで急遽予定を変更し、女性ワーカーが多くいる一農場を会場として借り、この農場で働く女性や近所の農家の女性達を集めてもらうことにしました。農場に到着するとオーナーさんが快く出迎えてくれ、すぐに女性達を集めてくれてスムーズにWSに取り掛かることが出来ました。
WSでは“フォーカスグループディスカッション”という手法を用いて議論を進めます。これは、あるテーマに関して少人数(8~10人)グループで議論をしてもらい情報を得る、フィールドワークの情報収集技法のひとつです。インタビュー形式などの誘導尋問のような形ではなく、趣旨を説明しテーマを与えるだけで後は自由に参加者同士で議論してもらうことで知見を深めてもらい、正直な意見を聞き出すことができます。
議論から、家庭の仕事では家畜の世話のほぼ全般に女性が関わっており、かつ家事の全ても女性の仕事となっており早朝から夜までずっと働いている印象を受けました。また、搾乳した乳を売る工程は男性が行うことが多く、直接の収入は男性が持ってしまうことが多いこと、病気の家畜を発見しても男性が収入を握ってしまい治療代を出してもらえないこと、家畜の売買に関してヤギや鶏は女性の判断で売ることが許されるが牛に関しては男性との話し合いが必須であることなどが意見として挙げられました。これらから、女性達が酪農技術指導のWSに参加する機会が得られないこと、女性の低収入が家畜疾病の蔓延に関わっている可能性、この地域で牛が家畜ビジネスの中で重要視されていることなどを強く感じました。最後にWSの感想を尋ねたのですが、小学校高学年ほどの女の子がこのような意見をくれました。
「女性にこのような問題があることを知らなかった。自分が結婚して子供をもつようになった時、子供達にもこの問題を伝えていきたい。」
子供にも酪農家女性をとりまく問題を知ってもらい、将来酪農家女性になった時にどうあるべきかという考えを持ってもらうことは、問題解決の一歩になるのかもしれません。
※今回のWSは急遽農家を会場に借りて行ったため、オーナーやその他男性ワーカー、子供なども出席する会となり、やはり男性がいる前では女性達は彼らに気を遣って話しているように感じた。また、課題として女性のみを集める難しさを感じた。(女性のフリー時間が少ない、収入が低いという問題があるため、女性一人で会場に来ることが難しい。)
2.カベーラ病の手術
カベーラ病という病気をご存知でしょうか。日本の獣医さんでも知っている人はいないであろうこの病気、プロジェクトのカウンターパートである県庁獣医師が名付けた、ウガンダの風土病と言っても過言ではない病気かと思います。(正式にはこのような病名は存在しません。)カベーラとはウガンダ国内のスーパーやマーケットで使われる、ビニールの買い物袋のことです。「ゴミはゴミ箱へ」という習慣のないウガンダでは、ペットボトルやカベーラなど非再生性ゴミのポイ捨てが大きな問題となっています。
県庁獣医師の元に往診依頼のあった牛の症状は、捨てられていたカベーラを大量に食べ立てなくなってしまったというものでした。実際に農場に訪問すると、一頭の牛が座り込んでおり頭を持ち上げるのもやっとな状況でした。状態をチェックしましたが、体の下敷きになっていた足は完全に硬直し神経が損傷しているのではないかと疑うほどで床ずれもひどく、正直手術をしても死ぬのは時間の問題ではないかと思わされるものでした。
現場では牛を運ぶ手段がないため、その場にビニールシートとクッション代わりの草を敷き、牛を横に倒してロープで保定し、大量のハエが飛び交う屋外で手術が始まりました。グルコース液を輸液しながら術野に麻酔を施し、ヨードなどで消毒後切開、第一胃の中に手を突っ込んで1キロほど重量のあるカベーラの塊を摘出し、手術は1時間ほどで無事終了しました。
3.ウガンダのクリスマスと年越し
ウガンダの年間最大イベントは、ずばりクリスマスです。ウガンダの信仰は大半がキリスト、残りがムスリムですが、クリスマスはムスリムの人々もキリストと同じように祝います。日本のクリスマスを思い出してみると、子供の頃は家族と家でケーキを食べ、サンタさんからのプレゼントをもらい、大学生になってからは恋人又は友人とパーティーやプレゼント交換をするのが定番なイメージがあります。一方、ウガンダのクリスマスは“家族と家でゆっくり過ごす“のが定番らしく、皆クリスマスを目掛けて実家へ帰り、そのまま年越しまでが年末休みのようです。サンタさんからのプレゼントやプレゼント交換という習慣もなく、日本の正月のような雰囲気を感じます。さらにクリスマス当日の街はかなり閑散としており、普段は乗り合いバスや人がごった返すことで有名な首都カンパラのOld taxi parkは人も車もなくガラガラになるそうです。
新年のカウントダウンでは、どこからか無数の花火が上げられていました。市や地区で上げられている花火ではなく、各個人が上げているため何の統一感もなく、フライング花火があったりいつ終わったのか分らなかったりと、何ともウガンダらしさを感じる年明けとなりました。