ウガンダ、タンザニアのスタディーツアーに参加して

掲載日:2019.05.08

獣医学類2年 今井はるか

今回のスタディーツアーに参加して感じたことは、獣医師として解決できることが現地の人の生活の中にどのように織り込まれているのかということ、また現地の方と話して、聞いて、見て、考えること全てが楽しいと思えたということです。1年前にウガンダに渡航した際には、初めてのアフリカ大陸ということもあり、無意識のうちに緊張してしまっていて今回のように冷静に振り返ることができませんでした。振り返るというよりも行ったことのない国で受けた刺激を受け取ることに必死であまり考えることにまで気が回っていなかったように思います。

参加している学生が私だけだったために日本語を話す場所が限られていたこと、先に留学をされている先輩のお話を直接伺うことができたこと、現地の方と話す機会が多かったこと、自分から話しかけようと心がけ何気ない会話をすることができたことが、私にこのような気付きをもたらしてくれたように思います。

 

昨年度は福井先輩が参加されていたこともあり、日本語で話したいときに話すことができる状況でした。先輩と日本語で話していれば、気になったことも現地の方に聞かずになんとなく内輪で済ませることができてしまっていました。しかし今回は先輩のお家にいるとき以外は現地の方と英語で話す機会が多く、自分から話しかけないといけない状況にいい意味で追い込んでくれたと思います。空港の職員の方、タクシーのドライバーの方、牧場の方、ホテルの受付の方、道端で声をかけてくれた方、話をしてくれた皆さんの視線や言葉が途切れた時の表情、服装、放っている雰囲気、視覚だけではなく、この人はどんな人なんだろうと大げさですができるだけ取材するような気持で考えるようにしていました。何が好きで、何を食べて、どんな音楽を聴いて、どんな言葉を話して、将来をどのように思い描いていて、そして今働いているのは誰を養うためなのか。

特に「今働いているのは誰を養うためなのか」という着眼点を持とうとしたのは、私がその相手との会話を私のような旅行者と当たり障りのないありきたりな会話だけで済ませたくなかったからです。学生として今は何も残せないこと、大きく貢献することができないことに対する反抗心というか、形だけで終わらせたくなかった、踏み込んで聞いてみたいというか、参加させていただいたスタディーツアーのプランをなぞるだけではなく何か積極的に(死なない範囲で)動きたかったんだと思います。もちろんその程度ではまだハングリーさがないというか、図々しさが足りなかったように今現在、自分自身感じていますが。

将来もし獣医師として国や地域の発展を手助けするため海外に派遣されたときに、それは海外で働くということでもあると同時に、派遣された先の誰かが、一緒にいたい人・家族や恋人や両親をもっとしっかり養ってあげられるように手助けしに行くということなのかもしれないと思いました。そんなことを考えながら折り紙を渡し、日本についてや相手の国についてゆったり自然に話をする機会に恵まれてよかったです。学生としてというよりも人としてなんとなく落ち着くひとときでした。そして折り紙をあげたときや、会話の中で何かに驚いた時の皆さんの表情がとても人間的で、私にはかわいく見えた瞬間でした。

また、ウガンダでの滞在中に大変お世話になった梅原先輩に自分が留学を含め今気になっていることを相談しアドバイスをいただけて嬉しかったです。実際に留学されている先輩のありのままの声を留学されているまさにその場所でき聴けたのは私としては大変参考になり、今後自分の進路や留学への意志を見直す良いきっかけになりました。先輩とは日本ではあまり会話をする機会がなかったのですが、留学をされている先輩はとても充実されているように見えて、そんな穏やかな雰囲気が協力されている農家さんにもカメラ越しに伝わって素敵な写真として形になっているのかなと思いました。被写体を撮っているというよりも撮る側と撮られる側の関係性が写真には映し出されているような気がしました。

プロジェクトの現場を見ることで思ったことは、外国人として現地の人とプロジェクトを進め、また良い結果を生み出すためには「信頼関係」が非常にキーポイントになっているんだなと感じました。その信頼関係というのは私のような外国人との信頼関係かもしれないし、プロジェクトを始める前にすでに存在していた信頼関係でもあると思います。信頼関係というより関係性が大きくプロジェクトの進展具合や成果に影響を及ぼすのではないかと思います。今回このプロジェクトの期間に一番変化が見られた農家さんと一番変化が見られなかった農家さんのお宅へ訪問させていただいたときに、それまでプロジェクトという軸でしか農家さんをとらえていなかったことを痛感しました。いつもワーカーの人は他愛無い話をしながら、みんなで洗濯物を洗って一緒に暮らしている部屋に干しているんだろうか、あんなに背が高いとあの部屋では狭くて、みんなで寝ると寝苦しくないのか、うまく眠れない日は何を想い出すんだろうか、家族はどこに住んでいるんだろう、プロジェクトを担当している日本人が訪問するとき何を思い返し、感じるんだろうか。プロジェクトを遂行するために赴任する以上、それが職務になるのは当然のことでプロジェクトの成果を追及することに集中しなければならないとは思うのですが、成果を追及するあまりプロジェクトという枠にとらわれてしまい、参加されている農家さんの生活の中にこのプロジェクトがどのように組み込まれているのか忘れてはいけないのではないかと思いました。プロジェクトをうまく進める上での重要な信頼関係は、プロジェクトとは関係のない他愛ない、相手を思いやったり気遣ったりするもっとささいな会話の中ではぐくまれるような気がして、また自分が手助けされる側であった時にもやはりそう感じるように思いました。そういった他愛無い会話を積み重ねていくには時間がかかることでもあり、忍耐強さも必要なのではないかと思います。そう考えるとおよそ3年という期間で大きな行動の変化があった農家さんがあるということはとても驚くべきことで、また学生という現地の方から親しみを持たれやすいうちに何がその成果を裏で支えていたのか、ぜひまたお話を聞きたいと思いました。現地へ赴いたときに専門家として信頼関係を築きながらも、親しみを持ってもらうという絶妙な距離感を保つのは時間のかかることで、かつ相手ありきのことなので大変難しいと思います。これから社会に出た後の専門家などの正式な形でしか海外に赴任できないならば、現地の人にとってなじめやすく素をさらけ出しやすい海外から来た女子学生であるうちに、いろいろな国の現地の方の本音をできるだけ聞いてみたいと強く思いました。

2回目のウガンダ、特にムバララはやはり1年前と変わらず、温和で、時たまやや強引で、それでいて陽気な街だと感じました。1年前に先生がおっしゃられていた「今日を生きるために働く」という、日本ではもう埋もれてしまったごく当たり前なことをいかに必死で現地の方が叶えようとしているのか、その意志を現地の方の視線から、今回の滞在中に何度も感じました。視線の温度のようなものは、その人と話したり、話を聞いたり、対峙することで体感してみないとわからないような気がします。ウガンダではそんな視線を全身で感じました。今までアフリカはウガンダしか行ったことがなかったので、国によって雰囲気や視線の温度にさほど大きな違いがあるとは知りませんでしたが、今回それについても知る、体感することができて大変興味深かったです。タンザニアの人の雰囲気が思っていたよりも落ち着いていたのがとても印象に残りましたが、それでもやはりタンザニアの人からもそのような温度のある視線を背中で少し感じた気がします。

ウガンダでも、タンザニアでも、特に街中を現地の方と同じ目線で歩くことで、そういったことも含め街中の雰囲気を感じ取ることができ私にはすごく面白くて刺激的な体験でした。話し出すとよく笑って聞いてくれた牧場の息子さんの笑顔、串焼きのヤギ肉が炭火で焼かれている香り、折り紙で一緒に遊んでくれた子供たちの笑い声、顔に当たる風の砂っぽさや赤みの強い土の色、帰り際に持たせてくれたバナナとオレンジのたくさん入った袋のずっしりとした重み、風のない暑さのこもる店内で自分で握って食べたウガリとルーの味、軒先で案内をしてくれた女性に折り紙を渡したときの驚いた表情、どこからともなくふらっとやってきて道を教えてくれるとまたいなくなっていくおじさんの視線、日陰で休みながら道端で物を売っている人達の他愛無い会話や笑い声、画家の方の絵の色使いや壁一面に飾られた生地の色の鮮やかさを絶対に忘れないと思います。タンザニアは約1日しか滞在しなかったにもかかわらず、街中の光景や現地の方との会話が忘れられずに今でも鮮明に思い出されて、また訪れたいと思いました。というかきっとウガンダにもタンザニアにもまた行くような気がします。

そして何より、また行きたいと思えるような旅を送ることができたこと、2か国でこれらの素晴らしい体験ができたのも、ひとえに蒔田先生、プロジェクトに関わられている皆様の信頼関係があるからこそ実現可能だったのだと思います。この場をお借りしてお礼申し上げます。大変貴重な体験をありがとうございました。これらの素晴らしい経験を糧にこれからの自分の進路について考え、動き続けたいと思っています。本当にありがとうございました。

ウガンダ、タンザニアのスタディーツアーに参加して
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