2023年度招へい研究者報告会②③を行いました
掲載日:2024.02.20
今年度の招へい研究者による研究成果報告会を実施しました。
まず9月1日に、台湾国立中興大学のDr. Kendy Tzu-yun Teng(ケンディ・ツーユン・テン先生)の報告会を行いました。国立中興大学からの招へい研究者受け入れは今回が初めてとなりました。ケンディ先生は6月10日から9月11日の期間、本学で研究されました。
開会にあたりまず萩原社会連携センター長からご挨拶があり、続いて受入教員である獣医学類蒔田教授からケンディ先生との共同研究に至る経緯や研究概要説明がありました。ケンディ先生とはカナダの疫学シンポジウムでお会いしたということ、疫学ネットワークの中でとても素晴らしい活動をされていて、学生指導などが忙しい中で今回の招へいが実現したことなどをお話しいただきました。
引き続きケンディ先生から、“Survival of dogs with melanoma under different treatments from one referral veterinary hospital in Japan”というタイトルで研究成果を発表していただきました。先生は本学の附属動物医療センターの協力を得て、黒色メラノーマと診断される犬の生存率と治療について統計学的分析を実施しました。研究の中では特定の犬種においてその生存率に特徴があるかどうか、また異なる治療アプローチが与える影響などについても言及されていました。短い滞在期間の中で、膨大な日本語データを用いてどのように分析したかなども発表されました。報告会には研究室の学生も参加し、会場からは「他の国では犬種も異なるのか?」などの質問があがっていました。また同様の研究を指導された萩原センター長からの助言により、帰国前に当該研究を実施した博士課程学生とのディスカッションが実現するなど、今後に繋がる研究報告会となったことが印象的でした。
「これは最初のステップ。今後どのような治療が適切か、患者動物のQOLをどう考えるかということにも発展していく」と述べられ、今後も本学の疫学ユニットと、中興大学の疫学研究室でのコラボレーションを強めていきたいと述べて報告会を終えました。
次に12月8日に、モンゴル国立大学のDr. Oyundelger Ganzorig(ガンゾリグ・オユンデルゲル先生)の報告会を行いました。オユンデルゲル先生は7月25日から12月25日までの期間、本学で研究されました。
オユンデルゲル先生も、モンゴル国立大学との協定締結(2021年)以来初めての招へい研究者としての受け入れが実現しました。受入教員である食と健康学類の石井教授とはこれまでも共同研究を継続しており、オユンデルゲル先生は2022年10月に一週間来学され、今年度の共同研究にもつながる準備をされました。また石井教授もモンゴル国立大学を訪問し、現地でのサンプル採取などを行ってきました。
今回のオユンデルゲル先生の研究タイトルは、“Characterization of volatile compound profile in Mongolian traditional fermented mare’s milk, as airag” 「モンゴル産伝統的馬乳酒の香気成分プロファイルの特性評価」でした。モンゴルの伝統的発酵乳アイラグの香り成分を分析し、どの化合物がアイラグの味わいに寄与しているのかなどを研究されました。
アイラグはその発酵の伝統技術と関連の習慣が2019年ユネスコ無形文化遺産にも登録されており、近年その多彩なプロバイオティクスなどが注目されています。オユンデルゲル先生は、アイラグに対する感覚特性の形成は多くの要因に影響されるため複雑かつ不明確であるが、機能性食品の消費に対する世界的な関心が高まっているため、今回の研究で得られた香気成分形成過程とプロファイルの発見は、今後の新製品製造や製品の基準設定、そして文化遺産の保護に不可欠である、と発表を締めくくりました。
萩原センター長からも「モンゴル国立大学とは今後も幅広い領域での研究を継続していきたい」ということ、また石井教授からも「両大学の協定締結によって、これまで実施してきた共同研究がより連携してスムーズに行えるようになった」と今回の成果について述べられて、報告会を終えました。オユンデルゲル先生は帰国後すぐに多忙な研究生活を再開されています。
これからもますます、台湾国立中興大学そしてモンゴル国立大学、両大学との研究交流が活発になるように、またケンディ先生、オユンデルゲル先生の今後のご活躍を心からお祈りしています。