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掲載日:2017.10.19

アルバータ協会大学院生留学サポートプログラム

酪農学園大学大学院 酪農学研究科 佐藤 駿


Ⅰ. 概要

 私は、カナダのサスカチュワン州にあるサスカチュワン大学獣医学部に8月19日から9月18日までの約1か月間短期研修に行ってきました。当初の予定では、Dr. Jaswantの大学院生のAnaさんの研究テーマである「ウシ体外受精卵の生産」を手伝う予定でした。Anaさんのご家庭の事情により、実験計画が1か月間延期となりましたので、その他のいろいろな研究、実験、授業および牛舎での活動に同行させていただきました。


Ⅱ. Les Kroeger’s FarmにおけるバイソンのFixed Timed Artificial Insemination(FTAI : 定時人工授精)

Les Kroeger’s Farmで飼養されているバイソンへのFTAIプログラム処置およびその人工授精の実施に同行しました。Les Kroeger’s Farmは、サスカチュワン大学から30~40分程離れた位置にあり、50~60頭のバイソンを飼養しています。バイソンは全て広大な草地で放牧されており、レシピエント牛である22頭のバイソンはプログラム処置の為にD型倉庫に追い込まれます。FTAIプログラムは図1のとおりに行われました。

図1. Les Kroeger’s FarmにおけるバイソンのFTAIプログラム


図2. Les Kroeger’s Farmで飼養されているバイソン



ⅰ) Day0

レシピエントである22頭のバイソンをD型倉庫内の通路(図3)に追い込み、超音波診断装置(図4)により両卵巣および子宮内を確認しました。外陰部を洗浄、消毒後にCue-mate(Progesterone device)(図5)を腟内に挿入し、首にEstradiol(E2)とProgesterone(P4)の混合製剤(1ml)を筋肉内注射しました(図6)。

ⅱ) Day8

 超音波画像診断装置を用いて両卵巣と子宮内を確認した後に、Cue-mateを除去し、首にPGF製剤(Estrumate)を2ml筋肉内注射しました(図7)。

図3. D型倉庫内


図4. 超音波画像診断装置

図5. 左:Cue-mate 右:アプリケーター

図6. E2&P4混合製剤

図7. PGF製剤(Estrumate)


ⅲ) Day11

 Day0、8と同様にバイソンを通路内に追い込み、首にHuman Chorionic Gonadotrophin(hCG)製剤を2.5ml筋肉内注射しました(図8)。凍結精液ストロー(図9)の融解は37度に保温した温湯中に1分間浸漬させます(図10)。その後、人工授精用注入器(図11)に装填し、術者の手に渡ります。

図8. hCG製剤

図9. 凍結精液ストロー

図10. ウォーターバス

図11. 上:シース管 中:注入器(中芯) 下:注入器



Ⅲ. ラマ、アルパカの採精

 大学院生のRodrigoさんはアルパカの脳内と精液中のタンパク質の関連性を研究していました。8月22日に牧場でラマ1頭、アルパカ3頭の採精を行いました。採精には、擬牝台、人工腟(図12)およびカイロを使用しました。採精作業を行う際に重要なことに温度と人工腟内の圧力があります。温度は42~44℃に保つため温湯とカイロで保温して、空気を入れることで内部の圧力を高めます。これらの要因が揃わなければ上手く採精することができません。牧場内の家畜は訓練されているため、擬牝台にスムーズに誘導することができました。ラマ、アルパカは腰を落とした状態で擬牝台に乗駕します(図13-14)。1頭の採精が終了するのに20~30分かかります。精液量は5~10mlですが、まったく採れない時もあるそうです。翌週の8月29日に22日に採精を行ったアルパカ2頭を大学内の解剖学実習室に搬入して、最後の採精を行いました。アルパカには麻酔が投与された後に、電気刺激法により採精が行われました(図15)。採精後は安楽死させ、脳を解剖しました。

図12. 人工腟

図13. 擬牝台に乗駕するアルパカ①

図14. 擬牝台に乗駕するアルパカ②

図15. 電気刺激法による採精作業



Ⅳ. Oocyte Competence Lab(OCL)での体外受精の実験

 9月13日にOCL(図16)で体外受精の実験が行われ、私も参加することができました。体外受精には、3つの工程があります。卵巣から吸引した卵子を体外で受精可能になるまで培養する「体外成熟培養」(IVM : In Vitro Maturation)、精子と成熟した卵子を共培養させる「体外受精」(IVF : In Vitro Fertilization)および必要のなくなった精子や卵丘細胞を除去して移植可能なステージまで発育させる「体外発生培養」(IVC : In Vitro Culture)です。実験スケジュールは図17のとおりです。サスカチュワン大学のウシ体外受精技術は家畜繁殖学研究室の堂地修先生がその基礎を確立されたため、本研究室の実験方法とほぼ同一でした。と畜場から吸引採取された卵胞液は、保温され研究室に持ち込まれます。回収された卵子は洗浄後、22時間インキュベーター内にて体外成熟培養されます(図19)。成熟した卵子と受精能を獲得した精子と共培養(18時間)させた後、余分な精子、卵丘細胞を除去して、発生培養を行います(図20)。体外受精48時間後に、受精卵が正常に卵割しているかどうか確認します。48時間目の時点で2細胞期のものを選別して、移植可能なステージに発育する7~9日目まで培養を続けます。サスカチュワン大学の卵割率は70~80%、胚盤胞発生率は30~40%程度であると聞きました。この数字は本研究室の成績とほぼ同じでした。

図16. サスカチュワン大学OCL内の様子


図17. サスカチュワン大学におけるウシ体外受精スケジュール


図18. 検卵風景

図19. インキュベーター

図20. 卵丘細胞の除去


          

Ⅴ. まとめ

 私はこの約1か月の間に様々な経験をすることができました。特に体外受精に関しては、自分の技術が海外の大学の技術に負けていないのだと確認することができ自信を持つことができました。農場での作業も同様で、研究室で培った技術や知識を役立てることができましたが、語学力が課題となりました。農場で牛を追い込むときなどは、当然ですがコミュニケーションが必須となり、自分の持つ技術や知識を十二分に発揮するためにも必要です。伝えたくてもなかなか相手に伝わらないことが数多くありました。今後は専門知識だけではなく、英会話力も磨いていきたいです。卒業後はこの1か月の経験を生かしていきたいと思います。
 最後になりますが、今回サスカチュワン大学に短期研修するにあたりまして、数多くの方々に助けていただきました。手助けしていただいたすべての方々に心より感謝申し上げます。

酪農学園大学社会連携センター(2017.10.19)|お知らせ, 全件, 国際交流, 研修を終えて(留学)

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