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掲載日:2018.09.28

トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム(カナダ・ガーナ) 活動報告書(8,9月)

獣医学群獣医学類3年 前田沙優里

 ガーナの政府機関であるVeterinary Service Office Akuapemでの4週間のボランティアを終了した。これにて、私のトビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラムによる海外留学は事後研修を除き修了したことになる。私の派遣先は上下水道も整っていない場所で、ガーナの都市部ではない、一般ガーナ人の生活を目の当たりにすることができた。思い返せば、ガーナでは到着して早々停電、飲料水による嘔吐下痢、微熱に見舞われ、翌週に入ってからは結膜炎と風邪という散々な健康状態が続いていたが、これからの自分の活動に影響を与えることとなった、とても充実した日々を送ったと自負している。
 さて、ボランティア活動に関しては、牧場への往診を主としている。午後にアクラに行き、Veterinary Service Officeの本部にて死亡解剖に付き合うなどもした。牧場指導者や獣医関係の職員を対象にプレゼンテーションをする機会をもらった。One health の会議に獣医部門代表として出席した。また、ブタの去勢手術のアシスタントをしたり、ニワトリやイヌのワクチン接種をしたり、といった臨床的な活動も行ってきた。4日間はガーナ東部の州都であるKoforiduaの屠畜場に行き、ガーナにおける食肉管理について学ぶ機会をもらった。
今回の報告書は、私が中流階級ガーナ人と同じ生活をし、ボランティアでの活動を通して知ったガーナの現状、日本人獣医学生がガーナに行く意味、私の今後の活動、の3点について書くことにした。特に、日本にいる人にぜひ知って欲しいことを中心に書いていこう。

屠畜場での一枚。これは、表面を焼いた後の、洗浄と解体の過程である。この後獣医師がチェックする。



1.ガーナの現状
・感染症が多い
 もともと黄熱病やマラリアなど風土的な起因もあるが、感染症が多いのが現状だ。上下水道が無く、衛生状態も悪い。病院へ行くことをしない子供。危険度の高い感染症に関しては、施設の整った受け入れられる病院が少ないのも現状だ。
 獣医師が大きく関わってくるのは、狂犬病だろう。ガーナでは犬への狂犬病ワクチン接種が日本同様義務付けられているにも関わらず機能していないのが現状である。厄介なのは、飼い犬が人を噛んだ場合に申告書を提出しなければならないのだが、飼い主が申告書の狂犬病ワクチン接種の有無を偽装することがある点だ。ガーナでは残念なことに、毎年1、2名の狂犬病による死者が出ている。(2018年8月現在は0人)そこで、Veterinary Service Officeでは無料の狂犬病ワクチンキャンペーンを定期的に実施し、飼い主にワクチン接種証明書を保管させ、飼い犬が噛んだ際に証明書を提出するよう呼びかけている。私も1日そのキャンペーンを手伝いに行った。

ニワトリにニューカッスルウイルスワクチンを打っている様子。この日は約3000羽に接種した。



・教育不足
 上述の感染症が多いことに関連するが、ガーナでの衛生や保健教育の必要性が先日のOne health会議にて指摘された。日本やカナダからのボランティア支援により、無料で診察、治療を受けられる医療機関があるにも関わらず、子供たちが大けがをしても病院へ行かないのは、けがをしたあと何をするべきなのか、どこに無料の病院があるのかなどを親子ともに知らないという点が挙げられる。
 私がガーナ滞在中に一番深刻だと思ったことは、あまりにも手洗いをしないことである。ガーナでは手で食事をする。しかし、小学校では手を洗わずに食事の時間に入る。チャイルドケアをしていた他のボランティアは、お昼ご飯の前にお漏らし処理をしたため、手を洗いたいと先生に訴えたところ、なんで手をわざわざ洗うのか不思議がられたという。この先生は極端かもしれないが、ガーナ人は本当に手洗い意識が低い。これは医療従事者や食品経営者にも言えることだ。そこで、同会議では、医療部門が職員の手洗いの徹底を呼びかけるとともに、私たち獣医部門から、水や石鹸が無い場合に備えてサニタイザー(殺菌ジェル)を携帯することと、手洗いは流水にて行うことを補足提案した。また、衛生管理の甘さを実感した私は、職員会議のプレゼンテーションにて、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)について日本での例を挙げつつ解説するとともに、往診の際の靴裏の消毒や、牧場職員が石鹸を用いて手洗いすることなど、意識次第で実行できるものもあることを強調して話した。
 このように、一般市民、職員共への教育がガーナでは必要といえる。後日、英語レポートを作成、提出することになったので、One health会議での学校教育関係者の出席を提案するつもりだ。

・ゴミ問題
 ガーナのどの町でも必ず目につくのが大量のゴミだ。特に深刻なのは首都のアクラだろう。道の脇には大量のゴミ。それもほとんどがビニール袋だ。(ガーナでは一般市民の中ではペットボトルではなく安価な袋入りの飲料水が主流で、とくにその水の袋はよく落ちている。)
 獣医学的にゴミが問題になるのは、家畜におけるゴミの誤飲だ。ヤギやヒツジなどは道端に放し飼いにされていることが多く、こういった反芻動物は反芻時に誤飲したビニールが詰まって食材の上下移動ができなくなり死因になりやすい。道路に放し飼いにしていないケースでもゴミによる家畜の死がみられる。牧場経営者のゴミに対する意識の低さが浮き彫りだ。
 どうせそこらへんにゴミがいっぱいあるからと、ポイ捨てをする日本人ボランティアがいた。非常に残念で悲しい。

ヤギの大量死の死因特定のため死亡解剖した際の臓器。今回の死因ではないが、胃の中にはビニール袋が入っていた。死因は、餌に含まれていたキャッサバの葉の毒素Cyanideとお米の給餌による胃の過剰膨満が原因で心停止と特定。



・政府の無機能
 例えば日本では、病原性の高い感染症に対して細かいガイドラインが決められているし、食品衛生法など様々な取り決めが政府のもとで管理されている。一方、ガーナでは政府はほぼ無関与。ガイドラインなどは各医療機関や食品管理機関に投げやりな状況で、各機関が独自に考えて実行している。屠畜場職員は、食品の安全に関わる政府の機関の元にも関わらず、必要なナイフなど器材購入は全て職員の自己負担であることを嘆いていた。出荷肉に異変が無いかチェックするプロセスを習ったが、これも職員が自ら考えたものだ。

・それでもガーナの未来は明るい
 ここまで散々、ガーナの後進的な部分を取り上げてきたが、個人的にガーナの未来は明るいと思っている。なぜなら、問題意識を持って本気で現状を変えようと考えている人たちがいるからだ。私が付いて一緒に活動していた獣医師もそのうちの一人だ。一人でAkuapem地域一帯全ての往診を担当しているにも関わらず、常に人の健康や、ドローンなど最新テクノロジーの活用をできないかなど考えている。そして、私のような学生からも意見を聞いてくれ参考にしてくれる。周りの人がなんとかしてくれる、政府がなんとかしてくれるでは済まされないので、医療関係者などは互いの協力意識がとても高く、各部門の繋がりと意見交換が盛んだ。町の獣医師と町医者、保健所などがチームとして一体になって町の改善を測るのは素敵な取り組みだと思う。
 さらに、JICA職員の提案したガーナ版母子手帳がついにJICA支援のもと今月から病院にて全てのお母さんに無料配布される。英語が苦手でもわかるようにイラストで分かりやすく子育てや子供の健康管理について書かれている。今、ガーナの医療事情はめまぐるしく改善されているのだ。

2.日本人獣医学生がガーナに行く意味
 将来日本でしか働く予定がなくても海外に行く意味などあるのだろうか。まして、最新技術を学べる獣医療先進国ではなく、物資も不十分で発展途上とされるような国に。
 まず、教科書で見た重要なウイルス病や寄生虫症を日常的に診られる。中にはもう日本ではあまり見られない病気も多く、万が一発症した際に、実際に目にした経験があるのとないのでは大きな差がある。
 次に、知られざる事実を知ることがある。宮崎県で口蹄疫が発生したことはまだ記憶に新しい。その際は、決められたガイドラインに沿って、感染牛を淘汰、焼却、埋没した。多大な牧場の経済被害はあったものの、再発生や感染範囲の拡大を防ぐことに成功したといってもいいのではないだろうか。さて、どこに埋没したかというと、なんとアフリカの地なのだ。これについてどう思うかは個人に委ねるが、その事実が世間にあまり知られてない(と私は思う)のは如何なるものか。
 最後に、ガーナをより良く変えていくかもしれない立場に学生でありながらなれる。身分や年齢、経験は問わず、医療機関のチーフ達は真剣に私の話を聞いてくれる。提案もどんどん受け入れてくれる。牧場へ往診に行けば、大歓迎してもらえて、手伝ってくれてありがとうと言われる。こんなやりがいを日本で学生をしているだけで味わえるだろうか。
きっとガーナに限らず、発展途上国といわれるような場所で活動してみたら、自分の理想の獣医師像がなんとなく定まったり、比較を通して日本の獣医療の様々な面を知ることができたりするに違いない。そして、獣医師の果たす役割の多大さを思い知れるだろう。もしガーナで実習やボランティアをしてみたい人がいたら、個人的に連絡してもらえればと思う。

ホストファミリーと家の敷地内にて。シャワーも洗濯機もない素朴な生活を送った。



3.今後の活動
 今後、私はトビタテ!留学Japan日本代表プログラムの事後研修に参加し、更なる留学の振り返りや今後の活動計画のブラッシュアップが行われるのだろうが、現状での計画を書こう。

・カナダでの繁殖研究の続き
 サスカチュワン大学とはこれからも繋がりを持ち続け、研究していたことを英語論文としてまとめるのが目標だ。

・ガーナへの物資支援とボランティアのフェアトレード化
 ガーナの獣医オフィスでのボランティアを通し感じた問題点が2つある。1つは、物資不足。十分な器材や医療器具が足りていないのだ。2つ目は、私達ボランティアは多額な資金を仲介業者に支払っているにも関わらず、ボランティア先にはそこまで還元されていないことだ。
 そこで、私が考案しているのは、クラウドファンディングの物資版と、ボランティア派遣のフェアトレード化を組み合わせたものだ。日本の動物病院などに医療物資の寄付を募り、お礼にガーナのお土産をプレゼントする。ガーナの獣医オフィスにてボランティアをしたい人を募集し、仲介を挟むより低下な資金を直接獣医オフィスに渡す。獣医オフィスはボランティアの住居の手配や食事の提供を受け持つ。なお、ボランティアは事前に集めた寄付物資をガーナに持っていき、獣医オフィスからガーナのお土産を受け取り日本に持ち帰る、というシステムだ。
 思いついた日にガーナの獣医オフィスに提案してみたところ、とても反応が良かったので、実現に向けて取り組んでいきたい。

・留学成果発表と留学相談
 トビタテ!留学Japanの公式な留学成果発表会に登壇するなど、自身の経験や活動を話す場に積極的に出ていくつもりだ。また、北海道内の大学生や、全国の獣医学生を中心に留学相談を受けたり、トビタテ!留学Japanの審査書類の添削をしたりと、自分のできる範囲でこれからの留学生のお手伝いをしていこうと思う。


4.さいごに
 無事に1年間にも及ぶ海外生活を終え、帰国してきた。それぞれの国で大切な出会いがあり、一生の友人が多くの場所にできた。違う環境に身を置いたことで得られる知識や気付きも多かった。もちろん思い返せば大変なこともあったが、総じて楽しい1年を送れたと思う。このような素晴らしい機会をくれたトビタテ!留学Japan関係者の皆様、堂地教授、社会連携センターの方々、家族、友人、関わってくれた全ての人にこの場をお借りして感謝の意を表したい。

通常ボランティアには渡さないという修了証と外部機関への推薦状、アクセサリーのプレゼントを獣医オフィス長である獣医師(右)から頂いた。これも今回の活動の成果である。




酪農学園大学社会連携センター(2018.09.28)|お知らせ, 体験談, 全件, 国際交流, 大学HP更新用, 現地レポート(留学), 研修を終えて(留学)

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